不動産投資に円安はどう影響する? 円安時の不動産投資の特徴と注意点

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不動産投資に円安はどう影響する? 円安時の不動産投資の特徴と注意点

昨年2022年の東京外国為替市場の円相場は10月20日に一時「1ドル=150円超」まで値下がりするなど、大幅な円安で進んでいました。1年前の2021年10月には「1ドル=110円」ほどで推移していたことを考えれば、急激な円安だといえます。ここまで円安が進んだのは実に32年ぶりのことでした。しかし、日本銀行が12月20日の金融政策決定会合でこれまでの施策から一転、金融政策の修正を決定したことでこの流れは一変することになりました。長期と短期の金利を操作する金融緩和策は維持するとしつつも、長期金利の変動幅をこれまでのプラスマイナス0.25%程度から0.5%程度まで広げると発表したのです。これを受けて円相場は急変、円高が進み2023年1月6日現在では1ドル134円ほどで推移しています。0.5%程度までの長期金利の上昇を認めたことは市場では事実上の「利上げ」と捉えられたのです。

 

今年春には日銀総裁の交代が予定されています。一部では、新総裁が金融緩和からの脱却を進めやすいよう辞任前の現・黒田東彦総裁が道筋をつけたのではないかともみられています。つまり、今後も日本国内の金利は上昇の道筋を辿る可能性があるのです。不動産投資においては金融機関からの借入金利が上昇に向かうことは間違いなく、結果的に返済負担が増えていきます。場合によっては、より直接的に変動金利に影響する短期金利の引き上げに動くこともあり得ます。まだ平時よりも円安感が残る現時点は、まさに不動産投資戦略の練り直しを考えたほうがよい局面かもしれません。

 

いずれにせよ日米の金利格差や為替に関しては常に注視すべきですが、本稿では特に「円安時の不動産投資」について詳しく解説していきたいと思います。また、今年の後半にかけて徐々に為替相場が円高に振れる可能性もありますので、その点にも留意しながら進めて参ります。

2022年の記録的円安の理由は
米国との金利差だった

 

2022年は1年を通して大幅に円安が進行した1年でした。2022年の3月半ばに、アメリカFOMCの政策金利見通しが引き上げられ、FRBの高官が今後の更なる積極的な利上げの継続を示唆したことに呼応してドル高円安が進行。一方、日銀はFOMCの利上げ後も金融緩和政策の維持を決定し、必要であれば追加緩和も検討するとの姿勢を崩しませんでした。このような円安容認とも解される日銀のスタンスが円安の流れを一層加速し、10月に一時1ドル150円を超えるという歴史的な円安ドル高相場となったのです。

 

不動産投資に円安が与える
具体的な3つの影響

円安によるインフレで不動産価格が高騰する

まず考えられるのが建築費の高騰です。食料品を中心にさまざまな値上げのニュースが日々世間を騒がせていますが、同様に住宅や住宅設備メーカーも同様で値上げラッシュが続いています。不動産の価格は土地と建物からなり、土地に関しては国内取引であれば円安の影響を直接受けることはありませんが、建物に関しては大きく影響します。というのも、日本は多くの建材を輸入に頼っているため、円安になれば輸入品の価格が上昇し結果的に建築コストが高くなります。さらに、現在は新型コロナウイルスの影響による人材や物流の混乱が組み合わさり、建築費の高騰に拍車をかけています。「ウッドショック」という言葉を耳にする機会が増えましたが、これは新型コロナの影響で在宅時間が増え、アメリカなどで新築住宅需要増をもたらし、その影響が輸入木材の価格や国内の流通価格にも影響し、木材価格が高騰するという現象です。加えて、人手不足やロシアのウクライナ侵攻による物流への影響などによって木材や鉄鉱石、原油などの資源価格が高騰したことを背景に、建築費はいまだ高騰を続けています。

 

海外投資家からの不動産投資が盛んになる

もともと日本の不動産は世界的に見ても割安だと見られています。実際、2012年に1ドル80円だったドル円相場が2015年には1ドル120円にまで円安が進んだことに呼応するように、外国人投資家の日本不動産への投資も拡大していったという状況があります。また、外資系の不動産会社であるCBリチャードエリスのレポートによると、2020年の海外投資家は、日本の住宅用不動産を2019年の1.7倍購入していたという調査結果も発表されています。円安は購入時点での割安感から将来的な円高期待につながり、日本の不動産投資に対する自国通貨ベースの投資リターンの底上げも期待できることから、外国人投資家の投資マネーが日本不動産市場に流入する材料になりやすいといえるでしょう。

 

不動産投資の借入金利が高くなる可能性がある

日本では2022年は長期間に渡って低金利を維持していたため、アメリカを中心とする海外の政策金利の上昇や上昇への期待によって、円安ドル高の構図になっていました。しかし、イントロでお伝えした日本銀行黒田総裁の発言により日本でも実質的には政策金利が上がることになり、その影響で住宅ローンや不動産投資ローンの金利が上昇する懸念が出てきました。12月30日のニュースでメガバンク3行は今年1月に適用する住宅ローンの固定金利を引き上げると発表しました。現時点では10年固定型を12月の水準から0・18%~0・30%幅引き上げる一方、各行とも短期金利の影響を受ける変動金利は据え置くとしています。10年固定では、三菱UFJ銀行が12月から0・18%幅引き上げ3・70%に、三井住友銀行が0・26%幅引き上げ3・79%に、みずほ銀行は0・30%幅引き上げ3・50%にするとのことです。三井住友は2013年10月以来、みずほは11年11月以来の高水準となります。

 

一般的に住宅ローンの金利のうち、金利の上昇の影響を最も受けるのは変動型金利で、長期固定金利型の場合は借入時の金利が上昇しやすくなります。ちなみに、不動産投資用の物件の購入はマイホームではありませんので住宅ローンを利用できず、不動産投資用ローンを利用する必要があります。この度の円安によるインフレを懸念した日銀の政策転換による政策金利の微上昇を受けて、銀行の貸出金利もあわせて上昇します。今後さらに日本国内でも利上げの方向に舵が取られた場合、不動産投資用ローンを借り入れる際の金利も徐々に上昇していくことになるでしょう。

 

円安が不動産投資に
影響するタイミングは?

不動産投資にさまざまな影響を与える円安ですが、具体的には3つのタイミングでその影響を受けると言えるでしょう。

1_不動産を購入する時

円安下での投資用不動産購入の場合、「不動産購入価格の上昇」や「借入金の金利上昇」が考えられます。先に述べた建築費の高騰を背景に不動産価格が上昇し、タイミングを見計っているうちにさらに価格が上がることで、想定していた投資額よりも初期費用が高額になる恐れがあります。また、金利上昇によって借入額が上がるリスクもあります。市場推移を見極めながら、不動産価格高騰前に物件を購入して運用することが望ましいと言えます。

 

2_不動産を売却する時

投資用不動産の購入時よりも売却のタイミングで円安になっているケースではどうでしょうか。現在のように円安が進行してインフレになると、不動産価格も他の物価同様に高くなることが多いものです。実際、近年は新築時の価格から下落しにくくなるというケースも増えていくだけでなく、人気物件では年数経過後も価格が上昇する場合も出てきています。もちろん物件の特徴やエリアにもよりますが、購入時と売却時の差額で儲けが出るケースも十分に考えられるのです。インフレの恩恵を受けやすいのが不動産投資の特徴のひとつだと言えます。

 

3_不動産のメンテナンス時

物件の維持管理には修繕やリフォームが必要ですが、円安により輸入する建築資材の費用や賃金が上昇している場合はその費用も当初想定していたより高額になる可能性があります。とはいえ、所有物件を運用し長期的にインカムゲインを得るならば、円安の影響はプラスになる可能性もあります。円安によるインフレが期待されることで、家賃の上昇も十分に見込まれるからです。いずれにせよ、物件の魅力を維持するための必要経費ではあるため、不動産投資のスタート段階である程度余裕を見て計画しておく必要でしょう。

 

不動産投資に影響を及ぼすのは
円相場の変動だけではない

 

円安が不動産投資に与える影響は大きいですが、不動産投資市場のニーズや価格変動には為替相場以外にも様々な要因が影響を及ぼします。例えば、少子高齢化が進行することで、今後賃貸ニーズが縮小することは間違いありません。人口減少が進んでいる都市などは将来的に空室リスクが拡大することが懸念されますし、結果として不動産価格の下落リスクもはらんでいます。また、不動産以外の物価や賃金の動きにも注意が必要です。たとえインフレであっても賃金が上昇していれば不動産ニーズが減退することはありませんが、景気が悪ければ投資ではなく貯蓄へと投資家心理が動くことは間違いありません。他にも税金の上昇も不動産投資市場に大きく影響します。最近では防衛費の増額がニュースを賑わせていますが、消費税などの税率が上がるとあらゆるモノやサービスの流通は鈍化します。特に高額な不動産において消費税の上昇はかなりの影響があります。

 

不動産価格はさまざまな要因で変動が起こるものです。国際情勢や為替相場、市況とともに、購入を検討するエリアの動向などミクロな視点も持って買い時や買い方を検討する必要があるのです。

 

経済情勢を見守りながら
不動産の買い時を見極めるべき

 

円安状況下は海外の投資家からすれば為替メリットが受けられ割安感があるため、海外の投資マネーが日本の不動産投資市場に流れつつあります。大きな打撃を受けたホテル市場であっても、コロナの影響もおさまりインバウンド需要を取り込めるとあって、現段階から土地の取得に動いている外資系企業も多いのが現状です。不安定な世界情勢、経済状況の変化など予測が難しい世の中ですが、不動産投資を検討する際は、物件やエリアはもちろんのこと、市場動向や円相場にも注視しながら検討することがなにより大切だと言えます。

 

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