定期借家契約とは?不動産投資におけるテナント契約で抑えておきたいポイント

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定期借家契約とは?不動産投資におけるテナント契約で抑えておきたいポイント

テナント契約には大きく分けて「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類があります。主な違いは契約期間の定めの有無。一般的な契約形態である「普通借家契約」が建物のオーナーに正当な理由がない限り賃貸借契約が自動的に更新されるのに対し、「定期借家契約」ではオーナー側が契約期間を定め、その期間満了時に契約が終了となります。テナントとしては契約更新がないため、契約期間が終了すれば退去しなければなりません。

 

不動産投資における店舗契約では「定期借家契約」を結ぶ方が良いとされています。なぜなら、老朽化した賃貸店舗の建て替えや用途変え、不良な入居テナントの入れ替えなどのメリットがあるからです。もちろん、メリットばかりではなくデメリットも存在します。

 

今回は、不動産投資として店舗をテナントと契約する場合の、オーナー投資家視点でのメリット&デメリット、また契約時の注意点をご紹介します。

まずは定期借家契約について
詳しく知ることから

平成11年に借地借家法の一部改正によって「定期借家制度」が創設されました。その趣旨は、優良な入居者の割合を高め、住環境が良い状態で建物が維持されることなどが上げられます。定期借家契約(定期建物賃貸借契約)では、オーナー側の正当事由に関係なく契約を終了させることができます。

 

つまり、オーナーとしては一定期間のみテナントに賃貸したい場合や、期間ごとに賃料の見直しを行いたい場合など柔軟に契約内容を検討できるのが特徴です。さらに、借主であるテナント側に止むおえない事情がない限り、中途解約を制限できるという特徴もあります。これにより、定めた期間の賃料収入を計画通り見込むことができ、安定した経営が可能になります。またマナーが悪いテナントとは再契約を結ばなくても良く、先に再契約の条件を定めておくことで借主のマナー向上も見込まれ、テナントの管理がしやすくなることも期待できます。

 

 

 

定期借家契約には法的要件がつきまとう

ただし、まだまだ定期借家契約は一般的ではないと言えます。その理由のひとつは認知度の低さです。よくあるケースとしては、例えば大手企業のテナントを誘致した際に「当社規定の契約書の雛形があるので、これで契約をしたい」と申し出られ、そのまま普通借家契約を結ぶケース。一般的だからという理由でそのまま契約の締結にいたる事例も多くあります。また、定期借家契約の締結にはいくつか手続きが必要であり、知識がなければ不成立になってしまうこともあります。その手続きとは

 

①契約締結時に必ず、契約期間を定めたうえで公的証書もしくは書面によって契約を締結すること

 

②契約書とは別にあらかじめ書面を交付して、契約の更新がなく期間の満了とともに契約が終了することを説明すること

 

③期間が1年以上の定期借家契約を締結した場合、貸主は期間満了の6ヶ月から1年前の間に借主へ契約終了の通知を行う必要があること

 

などが上げられます。これらの法的要件を満たしてない場合、定期借家契約であることを借主であるテナントに主張できず、普通借家契約と見なされ、契約期間が満了しても契約を終了できずに更新されてしまう可能性もあります。実際、過去の裁判では「②の別途書面による説明」がなされていなかったことで、定期借家契約だと認められなかった判例もあります。

 

ただし、これら法的要件さえ押さえてさえいれば、定期借家契約は不動産投資においてオーナー側にとってもメリットが大きい契約方法であることは変わりません。最近では店舗のテナント物件や大手不動産会社などでも広く使われるようになってきています。

 

不動産投資における
定期借家契約の3つのメリット

定期借家契約を締結していれば、貸した物件がいつ戻ってくるかわからない、想定していたよりも早くテナントが退去してしまった…といったタイミングによる不安や、契約解除のための労力・立ち退き料などのコストを減らすことができます。これにより、計画的な不動産投資が可能になると言えます。

 

①期間を定めることで短期間での契約が可能

定期借家契約の最大のメリットは、なんといっても契約期間を自由に設定できることです。極端に言えば、1年未満や1ヶ月といった短期から、5年、10年といった中長期の契約まで、投資家であるオーナー側の希望に合わせて決定できるのです。これは、賃料改定にとっても有効だと言えます。

定期借家契約の場合、再契約の際に家賃の改定を比較的簡単に行うことが可能であり、普通借家契約のように賃料改定の話し合いがまとまらず、調停や裁判で決着が着くまで賃料の改定ができないといったトラブルの防止にもなります。ただし、賃料を改定する場合は、契約終了の6ヶ月前までに送付の義務がある「契約終了に関する通知書」に、再契約に関する賃料などの条件を明記しておく必要があるので注意しましょう。

 

②立ち退き料が不要になる

立ち退き料とは、普通借家契約において貸主の都合で契約を解除したい場合い生じる金銭です。本来であれば店舗などの物件は、テナントに貸しているオーナー投資家の資産であるものの、借地借家法では自分のものを返してもらうのに借りているテナント側にお金を支払わないといけない、といった不条理なルールがあります。普通借家契約ではこの不条理なルールを貸主に課すことで借主の権利を守っているのです。その結果、諸々の理由によりテナントに退去を申し出たところ、予定外のトラブルに発展してしまった、というケースも多く存在します。

定期借家契約の場合は、そもそも更新という概念がなく、契約終了とともに入居テナントを立ち退かせることが可能。契約期間も貸主が自由に設定できるため、状況に応じて契約を締結しておけば、不要なトラブルを事前に防ぐことができるのです。

 

③家賃減額請求権を排除可能

定期借家契約の場合、特約によって借主であるテナントから家賃減額請求権を排除できることも大きなメリットになります。具体的には「借主からの賃料減額は請求できないものとする」といった不減特約という特約を有効にすることが可能です。これは、普通借家契約の場合、借主にとって不利な特約となるため無効になります。そのため、不減特約を有効にする場合は定期借家契約の締結が必須となります。

 

不動産投資における
定期借家契約の3つのデメリット

もちろんデメリットも存在します。借主であるテナントの視点に立ってみれば、契約期間が決められているため、一般的には縛りのない普通借家契約の方が良いと考えるでしょう。そのため、より良い賃料や条件がなければテナントを付けることが難しくなる場合もあります。

 

①賃料設定が比較的安くなるケースが多い

物件を借りられる期間が決められているため、長期的な出店計画を見越している企業やテナントからは敬遠されることが予想されます。ほかにも、定期借家契約の方が普通借家契約に比べて何かと制限が多く、お互いが折り合う条件でなければ契約が難しいといった側面もあります。定められた期間の賃料が保証されるという安心感を取ることで、賃料を相場よりも安く設定しなければならない場合もあります。

 

②契約締結時と終了時の手続きが煩雑

他にも、普通借家契約と比べると手続きが煩雑といったデメリットがあります。契約締結時には、借主に対して定期借家である旨を記載した「書面」を交付のうえ説明する義務が発生しますし、契約終了時には1年から半年前までの間に賃貸借を終了する旨を通達する必要があります。契約終了の通知は法律上は正面での提出は義務化されていませんが、実務上は証拠を残す意味でも「書面」で行うべきです。これらは普通借家契約にはない諸手続きであり、煩雑で忘れてしまう可能性もあります。

 

③貸主側からも中途解約ができない

定期借家契約においては、借主から中途解約を申し出ることが難しい反面、貸主側からも中途解約を行うことができません。不動産投資にかかわらず、いくらオーナー側の資産運用状況や家庭環境の変化によって中途解約をしたいと考えても、借主と合意解約できない場合ははじめに定めた契約期間の満了まで待つしかありません。その意味では、中長期的な投資や資産運用計画に基づいた契約が肝要と言えるでしょう。

 

借家契約ではなく
「定期借地契約」という方法も

ここまで「借家」に絞って話をしてきましたが、不動産投資としては何も建物ありきで考える必要はありません。すでに建物がある不動産を取得しておらずこれから不動産投資を始める投資家の方や、建物を解体もしくはリノベーションして新たに不動産投資の資産として活用を検討される方は、土地活用として「事業用の定期借地権」を検討されることも一手です。

定期借地契約のメリット・デメリットについては、こちらの記事をご覧ください。

 

契約の中身は交渉で決まる!
店舗開発やテナント契約に
熟知した不動産パートナー探しを

以上のように、不動産投資における店舗テナントとの契約には、その内容によって様々なメリット・デメリットが存在します。投資対象として不動産をどう扱うか、その期間や他の資産状況とも複合的に捉えたうえで、計画的な契約方法を検討すべきです。

 

店舗開発は不動産投資においてもニッチな分野です。大手不動産会社やマンションやレジデンスの開発に長けている不動産会社が、店舗用の不動産開発やその契約に精通しているとは限りません。いずれにせよ、不動産投資で店舗開発を検討されるなら、複数の不動産会社に相談のうえ、過去の実績や対応を比較して頼れるパートナーを探すことが成功の第一歩だと言えます。

 

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