店舗・事務所など事業用不動産投資で利回りより出口戦略を重視すべき理由
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不動産投資の場合、安定的に賃貸収入を得ていても、いずれは物件を売却する時期がやってきます。不動産投資の最終局面で行う不動産の売却は「出口戦略」と呼ばれ、投資の総仕上げとして重要視されています。出口戦略を考えずに不動産投資を見切り発車してしまった結果、適切なタイミングで投資を切り上げることができず、物件の売却価格がつかないことで、保有期間に得たインカムゲインを含めても収支がマイナスになってしまうといったことも珍しくありません。つまり不動産投資とは、うまく運用して家賃収入を得るだけでなく、投資の収支がプラスになるタイミングを見計らって物件を高値で売却して初めて成功といえるのです。
では、収益をもたらしてきた物件を適切に売却するにはどのようなことに気を付ければいいのか。今回は不動産投資における出口戦略についてお話しいたします。
そもそも不動産投資における
出口戦略とは何か
いかに「損失を少なくおさえて撤退するか」の作戦を指す軍事用語である出口戦略は、米国防省がベトナム戦争時に使用したのが始まりとされています。これが転じて、今日では低迷する市場や業績悪化の局面から損失を最小限に抑えて難局を打開する場合に使われるようになっており、投資や金融政策などで頻繁に用いられています。
そんな出口戦略は、不動産投資においても重要だと言われています。不動産投資の世界における出口戦略とは、所有していた物件を売却・処分して利益(損失)確定させることを指しますが、その手法は売却だけではありません。「出口戦略=売却」以外にも「更地処分」「物件の建て替え」など、選択肢にはさまざまなものがあります。
不動産投資というと、どうしても家賃設定や空室率といった目先の収益性に目が行きがちですがそれは間違いです。なぜなら、投資する物件の購入費用に対して、家賃収入であるインカムゲインと、売却益であるキャピタルゲインの合計が上回らなければ、その投資は失敗ということになってしまうからです。逆を言えば、不動産投資は最適な時期に売却しなければ最大の収益が得ることができないばかりか、いくらそれまでの利回りが良かったとしても最終的に安価に売却してしまうと損をする可能性もあるということです。
優良な物件だと判断し不動産に資金を投入したとします。賃貸経営も順調に推移し、安定的な賃料収入を確保できました。しかし、5年後、10年後には、景気不景気の状況や銀行からの融資金利の上昇、稼働率の低下(空室率の増加)、大規模改修など経済情勢の変化や運用リスク、想定を超えた経費負担などが発生する恐れもあります。これらのリスクは投資時には見えにくいものです。だからこそ、投資する初期段階あるいは投資すると同時に、ある程度の出口戦略を立てておくこと必要があると言えるでしょう。
出口戦略を意識すると
高利回り物件が良いとは限らない
不動産投資において出口戦略を考える場合「収益性」と「資産価値」のどちらか、または両方が高い物件を購入することがポイントになってきます。もちろん、効果的なインカムゲインを得るために利回りを重視することも大切ではありますが、出口戦略を意識すると、高利回りにとらわれて物件を選ぶだけではリスキーだと理解できるでしょう。事例をもとに考えていきますが、その前にいま一度「利回り」について整理しておきます。
そもそも利回りとは、投資した金額に対して得られる見込み収益の割合のことで、大きく分けて2つの種類があります。それが「実質利回り」と「表面利回り」です。「表面利回り」は年間の家賃収入を不動産の購入価格で割ることで計算できます。ただし、不動産を維持するためにかかる諸経費は考慮されておらず、年間を通して満室を想定した数字となっているため「必ずこのくらいの利益が得られる」ことを示す数字ではありません。一方「実質利回り」には固定資産税や管理費、保険料や修繕積立金など不動産運用にかかる諸経費が加味されているので、より現実に即した数字を知ることができます。具体的な手取り収入や物件を比較する際は「実質利回り」のチェックが必須となります。
ただし「実質利回り」であっても、不動産の収益性を正確に判断することはできません。不動産は長期的に見ると年月が経てば必ず劣化し、年々維持費が上ががることもあれば、予期せぬ大規模な修繕が必要になることもあります。また、空室が出た場合にその分の家賃収入はもちろん目減りします。そこで、不動産投資を行っていく上での重要な指標のひとつに「NOI利回り」があります。
NOIとは「Net Operating Income」の頭文字をとった略称で、日本語では「純収益」を指します。詳細は長くなるので割愛しますが、不動産投資におけるNOI利回りでは、空室によって家賃が得られなくなるリスクや経費によるコストを含めながら不動産の資産価値を計算します。つまり、投下資金に対する投資収益の割合をより具体的かつ実質的に検証することができるのです。ただし、いくら計算式があったとしても本当の利回りは不動産を実際に投資・運用しないと分からないもの。だからこそ、出口戦略を考えることなく目先の利回りの高さだけで投資物件を選ぶことはリスキーだと言えるのです。
例をもとに考えてみましょう。
<利回りが高い>
築古物件/建坪率や容積オーバーの違法物件/郊外にある物件/駅が遠い物件/残存年数が少ない物件
<利回りが低い>
新築物件/都心部にある物件/駅近の物件
前述の通り、利回りとは投資した金額に対して得られる見込み収益の割合のことを指します。極論を言えば、不動産の取得や維持費用が安く、高い賃料を得られる物件は高い利回りになります。利回りのみを重視すると築古の郊外物件が高くなり、新築の都心部物件が低くなります。例えば、東京都心部をはじめとする超一等地の不動産は希少価値が高く、物件価格が高額なので、家賃を高めに設定したとしても低利回りになるケースがほとんどです。一方、人口が急減している地方の築古不動産は、空室リスクが高く物件価格が安いため、高利回りの物件が目立ちます。利回りだけで判断すると、築古の郊外物件が優れています。
ただし、両者のうち出口戦略を描きやすいのは都心部の一等地の物件です。値付けさえ適切であれば買い手は多いでしょう。対して、購入時に築古だったアパートは、売却時にさらに傷んでいる可能性があります。そのため、価格を極端に下げないと売却が難しくなるケースもあります。
不動産投資段階から考える
出口戦略の6つのポイント
一般的に投資の世界では、投資の期間や売却の時期に決まった法則はありませんが、投資対象が不動産の場合は事情は少し異なります。なぜなら、物件の老朽化(経年劣化)や環境ニーズの変化は必ず起こるからです。つまり、売却してみなければ「その不動産投資が本当に成功したか」は分かりません。だからこそ購入時・運用中・売却前に出口戦略を描くことが重要なのです。
少し話はそれますが、不動産投資の最大のメリットは「投資期間中の損失を最終的には売却で穴埋めできる」ことにあります。売却価格が投資期間中の諸経費を除いた家賃総収入とローンの残債(価格)、ローンの頭金を足した額よりも高ければ、最終的に損をしたことにはなりません。銀行から借りた融資金の残債がいくらあるのか。投資期間中の家賃総収入は現時点でいくら積み上がっているのかなどを算出し
「売却価格>家賃総収入+融資返済金+融資時の頭金」
であれば売却して問題ないタイミングだと判断できるます。ただし、不動産に投資して運用をしていくなかでその時期を見極めるのは困難でもあります。そこで、不動産投資の出口戦略を成功に導くためにいくつか押さえておくべきポイントをご紹介します。
出口戦略のポイントその1:売却条件を決めておく
「購入からこれくらいの年数が経ったら売却する」「売却見込額がこれくらいになったら処分する」など売却条件や理由をあらかじめ明確に決めておくことで利益を最大化しやすくなります。売却時期は、物件が抱えている物理的、経済合理的な理由や、投資における損益分岐点を天秤にかけて決めることになります。ただし条件設定には、専門的な知見が必要なため、不動産会社のコンサルタントや税理士などのアドバイスを参考にしながら決めるのがよいでしょう。
出口戦略のポイントその2:物件を安く仕入れる
安く物件を仕入れることができればそれだけ売却益を得られるチャンスが広がります。同じ物件を同じ期間所有しても仕入れ価格が異なれば「売却益が出た」「売却損が出た」と違う結果が出る可能性もあります。投資を検討する物件の妥当性や将来性についても、専門家に相談しながら進めるのがベターだと言えます。
出口戦略のポイントその3:稼働率を高める
物件の稼働率を高めることは、安定経営だけでなく出口戦略においてもプラスとなります。なぜなら稼働率の高い物件は、高利回りとなりやすく買い手を見つけやすいからです。ただし、稼働率は上げようといって上がるものではありません。立地や物件のポテンシャルなどを見極めながら物件を選定することが重要です。
出口戦略のポイントその4:残りの法定耐用年数を意識する
建物は、構造(木造22年、鉄筋コンクリート造47年など)によって法定耐用年数が決まっています。 多くの金融機関は、不動産投資ローンの融資期間を「残りの法定耐用年数以内」を目安に設定している傾向あがります。そのため法定耐用年数がある程度残っているタイミングで売却したほうが買い手を見つけやすいでしょう。
出口戦略のポイントその5:市場が好況のときに売り抜ける
物件を高値で売却したいのであれば不動産市場が好況のタイミングの見定めることも重要です。例えば金融機関が不動産投資の融資に積極的な時期は、買い手も増えるため、相場が高騰しやすいといわれています。
出口戦略のポイントその6:所有期間5年以内か以上かの判断
不動産投資の出口戦略では、売却益に課せられる譲渡所得税を抑えることも重要です。譲渡所得税は、物件の所有期間が「5年超」と「5年以下」で税率が19.315%も異なるため、注意しておくべきです。
譲渡所得税についての詳しい記事はこちらを参照してみてください
出口戦略を意識した不動産投資に
店舗・事務所など事業用物件という選択肢
最後に、出口戦略を考慮した上でおすすめの物件として、店舗や事務所テナントなどの事業用物件を紹介します。事業用物件の出口戦略では、居住用物件として売りに出したり、自分が住む用途に変更することはできません。ただし、中長期的な投資として考えると、事業用物件への投資は出口戦略を考えやすいいくつかのメリットが見えてきます。
長期契約の定期借家契約なので
時期を定めた出口戦略を考えやすい
居住用物件の場合、入居者の仕事の都合や転勤、結婚出産などライフステージの変化、近隣居住環境の変化などによって短期間での退去が多くなりがちですが、事業用のテナント物件の場合は入居する事業者の事業が順調であれば比較的長期の入居が期待できます。契約に関しても「定期借家契約」を結ぶことで、ある程度中長期的な視点で契約期間を設定することが可能。また、テナント退去後の原状回復工事はオーナー負担にならないため、予測不能な修繕リスクを軽減できるというメリットもあります。
法人での投資の場合
本業の事業計画と組み合わせやすい
以前の記事で「中小企業の経営者こそ不動産投資を検討すべき理由」というものをご紹介しましたが、事業安定化や節税面でも事業用物件への不動産投資が有効だとお伝えしました。同様に、不動産投資の出口戦略を考える際にも事業用物件への投資は有効だと言えます。本業も含めた中長期的な経営計画と組み合わせながら不動産投資を行う場合、売却条件のなかでも物件売却のタイミングは重要なファクターになります。もちろん、長期保有がゆえに環境やニーズ変化などの不確定要素が増えるのはデメリットではありますが、経営計画と合わせて綿密に出口戦略を設計することでリスクヘッジも可能になるでしょう。
出口戦略を考えながら
効率的な不動産投資を目指そう
いかがでしたでしょうか。不動産投資は明確な出口戦略を描くことが成功の第一歩だとご理解いただけたかと思います。不動産投資の成功とは「初期費用とローン残債の合計」よりも「キャッシュフローと売却益の合計」が上回ること。つまり売却してみなければ「その不動産投資が本当に成功したか」は分かりません。だからこそ購入時・運用中・売却前に出口戦略を描くことが重要なのです。
もちろん、ベストな出口戦略は、状況によって変わり続けます。だからこそ一定期間ごとに「キャッシュフローが予定通り積みあがっているか」「不動産市場がどうなっているか」などをチェックし続けることが重要です。また、物件の売却を行う際には、必ずスケジュールに余裕を持たせるべきです。不動産売買においては、売りたいタイミングで必ず買い手が現れるとは限りません。いつまでに売らなければならないという事情から、相場よりも安値で物件を手放さざるを得ず、結果的に出口戦略が失敗してしまうケースもあります。
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不動産デベロッパーの専門知識から生まれる洞察力で、不動産投資家としての視点を磨きませんか?関西を中心に不動産開発を行う今村不動産株式会社が、不動産建築から市場分析、押さえておきたい法律、最新テクノロジー活用から実践的なアドバイスまで、あらゆる角度から不動産投資に関する情報をお届けします。あなたの不動産投資戦略を、より確かなものに。