不動産投資の売却戦略!事業用不動産の売却時の注意点

  • #法人投資
  • #不動産投資
不動産投資の売却戦略!事業用不動産の売却時の注意点

不動産投資において、個人投資家はもちろん企業投資としてもオフィスビルや商業施設といった事業用不動産に投資されている方は少なくありません。インカムゲインとして十分な賃料を得ている間は問題ありませんが、同時に考えなければならないのが売却です。不動産は経年によって建物が劣化しますし、市場環境の変化によって収益性も変わってきます。特に企業が所有する事業用不動産のなかには、うまく活用できていない不採算不動産、遊休不動産があることも少なくありません。活用できていない事業用不動産は、固定資産税はもちろん維持管理費用がかかったり、所有者責任(工作物責任)等の責任問題が発生するなど投資の負担になっているケースもあり、私たち今村不動産にも売却方法や売却タイミングについての相談があります。

 

そこで今回は事業用不動産を売却する時のポイントについて解説していきます。

事業用不動産の売却
事前準備から契約までの流れ

 

ビル、工場、倉庫、商業施設などの事業用不動産は、アパートやマンションなどの居住用不動産と比べて不動産の査定、相場の算出、売却先探しなどに時間がかかるのが一般的です。また、物件規模や売却額も大きくなりがちで、居住用不動産より様々な設備を有している建物も多く、価格を含めた条件交渉でも時間がかかります。だからこそ余裕を持って売却計画を進める必要があります。

 

売却を決めた段階で、まずは以下3つの準備が必要になります。

 

STEP.1 テナントへ売却を通知

前提として、事業用不動産の売却に伴うオーナーチェンジでは、現在のテナント契約が次のオーナーに引き継がれます。テナントから許可を取る必要は特にありません。ただし、所得権の移転手続きが完了した後は、必ずオーナーが変わったことをテナントへ通知する必要があります。一方、リフォームが必要だったりテナントを空にしたりする必要が出てきた場合には、事前に立ち退き要求を行います。この際、ビルの老朽化や土地の再開発に伴う大規模修繕や、オーナーのやむを得ない経済的理由になどが正当事由として認められないと、立退料が発生します。

 

STEP.2 テナントの敷金を精算

事業用物件のテナントから預かっている敷金は、売却時に新しいオーナーに引き継がれます。一般的には、新しいオーナーがビルの購入価格からテナント全ての敷金を差し引いて支払うことで相殺する方法を取ります。テナント側にとっては敷金に関して減額が発生するわけではないため、新貸主に敷金も引き継がれていることを知らせておけば問題はありません。また、建物の管理会社が敷金を管理していて、売却のタイミングで管理会社の変更が生じる場合、手続きに時間がかかるケースがあります。スムーズな売却を行うために、事前に保管先を確認しておくべきです。

 

STEP.3 売却価格相場を調査

不動産の価値は個別に決まるものですが、周辺の土地の価格などを把握しておくとある程度の売却金額を予測することは可能です。公的機関の調査した公示価格のほか、実際の売買価格がわかる「土地総合情報システム」、「レインズマーケットインフォメーション」などが参考になります。また、売却の査定金額は不動産会社によって異なります。事業用不動産の売却で失敗しないためにも、複数の業者に査定を依頼し売却価格を押さえておきましょう。

 

 

事業用不動産売却に向けて
整備しておくべきポイント

 

上記で事業用不動産の売却の事前の流れをご説明しましたが、余裕を持って売却計画を進めるにあたって売却を視野に入れたタイミングで取りかかれる準備もあります。

 

ひとつ目は、できるだけ空きテナントを減らしておくことです。事業用不動産の価値はその収益性と言っても過言ではありません。所有している事業用不動産が空きテナントだらけだと、当然査定額も低い評価になります。逆に、空きテナントがほとんどない状態であれば高い評価が得られます。例えば、短期間でテナントを埋めるためのテクニックとして、フリーレント(入居から数カ月の賃料が無料になるサービス)があります。一時的に収入は減りますが、その分高額で売却ができればトータルで考えると得になるかもしれません。

 

ふたつ目は、関連書類を集めておくことです。事業用不動産を購入する人は、その建物がどれだけ稼ぐ力を持っているかを気にします。前述のテナントの入居率と合わせて見られるのが、テナント状況や賃貸収入をまとめた「レントロール」という資料です。テナントの情報や契約期間などがまとまっていれば買い手としても購入判断がしやすくなります。同時に、過去の修繕履歴についても把握しておくべきです。定期修繕・大規模修繕が直近で行われていれば、安心して買える物件だとアピールにつながります。

 

 

事業用不動産売却にお金がかかる?
売却にともなう税金や費用

 

事業用不動産の売却には、各種手数料などのほかに譲渡所得税という税金がかかる場合があります。馴染みのない税金なので注意が必要です。個人と法人の場合で少し異なる点がありますので、詳しく見ていきましょう。

 

●譲渡所得税(個人の場合)

譲渡所得=譲渡価額-(不動産の取得費+譲渡費用)-特別控除

 

個人が事業用の不動産を売却した場合、売却益で所得が発生すると譲渡所得税が課税されます。売却した翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告をして納税する義務があります。不動産を所有していた期間によって税率が変動し、所有期間が5年以下(短期譲渡所得)での売却の場合は所得税が30%、住民税が9%。所有期間が5年以上(長期譲渡所得)での売却の場合は所得税が15%、住民税が5%かかります。加えて、令和19年までは復興特別所得税として、所得税額の2.1%が所得税に加算されるので忘れないようにしておきましょう。

 

●法人税(法人の場合)

法人が不動産を譲渡した場合には、不動産の譲渡以外の事業による所得と合わせて法人税が課税されます。個人の譲渡と異なり短期や長期の区別はなく、譲渡所得とほかの事業所得を区別する必要もありません。法人所得の計算は1年ごとの事業年度で計算するのがルールです。売却価額が取得費より高くなった場合は利益が発生し、売却価額が低くなると損失が発生します。売却益や損失は譲渡した価額から貸借対照表に記載された毎年の固定資産の簿価と、譲渡に要した譲渡費用を差し引いた計算結果から求めることができ、これは特別利益や特別損失となります。以上を経常利益と合算し、トータルの利益に対して法人税が課税されます。

 

その他にも、事業用不動産の譲渡時にかかる費用は様々ありますが、基本的に譲渡費用として譲渡所得から控除することが可能です。

 

・不動産会社に支払った仲介手数料
・賃貸物件だった場合の賃借人への立退料
・土地として売るために建物を取り壊した費用
・高く売るためにすでに締結していた契約を解除した場合の違約金
・借地権を売るために地主に支払った名義書換料

 

 

企業の事業用不動産の売却は
その売却時期にも注意が必要

 

前述の通り、企業が所有する不動産の売却時には「譲渡所得税」はかかりませんが、企業の事業所得として扱われるため他の事業の所得と合算して、そこで得られた利益に対して「法人税」が課されることになります。不動産の売却で利益が出たとしても本業が赤字の場合は利益が相殺されますが、逆に本業が黒字でさらに売却益も出るとなると法人税の負担が大きくなるのです。だからこそ、企業として事業用不動産を売却する際に重要なのはタイミング。つまり、売却益が出る時期が法人の会計上いつになるのかです。例えば、よくある3月決算の企業の場合は3月に売却するか4月に売却するかで状況が変わってきます。今期は本業利益があまり出ていないが来期は利益が出る見込みが大きい場合、売却益が出るような不動産売却を今期中に済ませておくという工夫も可能になります。

 

ここで注意すべきは「不動産売却益はいつ計上されるのか」です。通常、個人が所有する住宅用不動産を売却した場合「不動産を引き渡した日」になります。企業所有の不動産の場合も個人と同様で原則として「不動産を引き渡した日」になりますが、実は「契約を締結した日」も選ぶことができるため、決算期をまたぐ売買において調整が可能になります。ただし、売却先の企業の都合もあるので、それも踏まえた交渉が必要となことも覚えておきましょう。

 

 

事業用不動産売却に向けて
確認しておくべき要素とは

 

さらに、事業用不動産を売却する際に注意すべきは「売却する不動産の状況を把握しておくこと」です。特に長期間所有している不動産の場合は不動産の状況を正確に把握できていないことも多かもしれません。不動産売却の前に少なくとも以下ポイントは見直しておいた方が良いでしょう。

 

<建物について>

●「既存不適格」になっていないか?
増改築が行われている、用途変更がされていない、法改正がされたなどの理由で現状の法令に沿っていない建築物になっている可能性があります。

 

●建物のメンテナンス、劣化状況、耐用年数の把握
定期修繕・大規模修繕の状況によって販売価格もニーズも変わってきます。古い建物の場合はアスベストの利用の有無やPCBが利用されている設備については、購入者への告知事項と規定されています。

 

<土地について>

●隣接地との境界は正確か
測量によって土地面積などが正確に把握されているかは重要なポイントになります。建物施設を使用しているうちに設備が増え、隣接地との境界を越境していることもよくあります。

 

●施設利用による汚染の有無
施設利用の結果土壌汚染や水質汚濁の問題がないかも確認しなければなりません。

 

●古い井戸や使用していない浄化槽など地中埋設物の有無
古い井戸や浄化槽は購入者の利用用途次第では妨げとなってしまう可能性があります。

 

上記項目は「告知書(物件状況報告書)」として、売却先に提示する必要があります。これらに記載漏れがあると「契約不適合責任」となってしまい、後々になっても売主が責任を持って対処しなければならないこともあり、場合によっては売買契約の解除に繋がりかねません。明確でない場合は専門家による鑑定や調査も視野に入れる必要があります。

 

 

事業用不動産を早く高く売る
押さえておくべき3つのポイント

 

1.査定価格についての理解

そもそも不動産売却の際に不動産会社などから提示される査定価格は、「売り出し価格」を設定する基準となる価格です。不動産会社が取引事例などの客観的なデータを基に「査定価格」を算出します。ただし、実際にいくらで不動産を売却できるかどうかは、売り手と買い手の合意があって決まるものです。

 

不動産会社によって、査定方法や不動産に対する考え方に違いがあることも覚えておきましょう。同じ不動産を複数の不動産会社に査定してもらうと、査定価格に差が出ることが一般的です。「査定価格算出の根拠」を不動産会社に確認することを忘れないようにしましょう。また、査定価格は売却価格設定時の参考程度の金額であるため、査定価格が高いからといって必ずしも高く売れるわけではありません。実際に売れる可能性が低いような高額な査定金額を提示する不動産会社も少なくありませんので注意が必要です。

 

2.売却活動状況の確認

事業用不動産の売却依頼をした後に、不動産会社が具体的にはどのような売却活動をしているかを売主自身がしっかり確認することも大切です。不動産の売却活動を始める前に、不動産会社は対象不動産の「販売用図面」を作成します。不動産の写真は外観・室内など複数掲載されているか、不動産のセールスポイントが細かく記載されているかなど、物件価値が伝わる資料になっているか確認すべきです。

 

また、不動産会社は売却媒介契約を締結した物件を「レインズ(不動産流通標準システム)」に登録する義務がある場合があります。しかし、不動産会社のなかには、買主と売主の両方から仲介手数料を受け取るために、「販売用図面をレインズに公開しない会社」も存在します。不動産会社を通じて、レインズにご自身の不動産が登録されたら、「登録証明書」を必ず受領し、「図面の登録有・無」を確認するようにしましょう。

 

3.広告活動をチェック

不動産売却の広告活動としては、紙媒体(新聞チラシやポスティングなど)、インターネット(自社HPへの掲載や不動産ポータルサイトへの掲載)、オープンルーム開催(空室の場合)などがあります。あまり知られていませんが、不動産会社は媒介契約の種類に応じて、売却営業活動の報告が義務付けられています。気になる場合はどのような広告活動を行っているか、詳細をしっかり不動産会社へ確認しましょう。

 

 

事業用不動産に強い
不動産会社に相談しましょう

 

事業用不動産の売却では、よくある居住用不動産に適用できた特例が適用できないケースがあり、売却前には税金面での検討や確認が必要になってきます。また、売却のハードルも居住用不動産に比べて高くなり、その期間も長い傾向にあります。その意味でも、事業用不動産の売却は検討段階から事業用不動産に強い不動産会社に相談することが重要になってきます。税金以外の費用を抑える方法についてアドバイスを受けられることもあります。

 

今村不動産は店舗やビルなど事業用不動産に特化した不動産の総合ディベロッパーとして豊富なノウハウと実績があり、特に法人の事業用不動産の開発や売買には強いと自負しています。現在ご所有の不動産の見直しや売却をご検討の方はぜひご相談ください。

ピックアップ

不動産デベロッパーの知見を活かした不動産投資メディアサイト

不動産デベロッパーの専門知識から生まれる洞察力で、不動産投資家としての視点を磨きませんか?関西を中心に不動産開発を行う今村不動産株式会社が、不動産建築から市場分析、押さえておきたい法律、最新テクノロジー活用から実践的なアドバイスまで、あらゆる角度から不動産投資に関する情報をお届けします。あなたの不動産投資戦略を、より確かなものに。