意外と見落としがちな固定資産税 建物評価額の算出方法を解説
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株など他の投資では関わりがない税金である固定資産税は、不動産投資においては軽視できない支出のひとつです。毎年かかる費用だからこそ、しっかりと理解しておきたいところ。
これまでこちらのコラムでは不動産投資における税金について様々な角度からお伝えしていましたが、今回は「固定資産税」にフォーカスを当ててご紹介。固定資産税の仕組みや計算方法、さらに軽減措置について解説していきます。
そもそも固定資産税とは?
誰が支払うべき税金なのか
固定資産税とはその名の通り「固定資産」に対して課せられる税金(地方税)です。固定資産とは、土地や家屋、償却資産を総称したものであり、詳しくは以下のものを指します。
【土地】田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、その他の土地(雑種地)
【家屋】住家、店舗・工場(発電所・変電所含む)、倉庫、その他の建物
【償却資産】構築物、機械・装置、工具・器具及び備品、船舶、航空機などの事業用資産で、法人税法又は所得税法上、減価償却の対象となるべき資産。※ただし、自動車税種別割、軽自動車税種別割の課税対象となるものは除きます。
上記のように、土地や建物を所有しているすべての人に納税の義務がある地方税です。不動産投資においては、マンションやアパート、ビルや倉庫といった不動産物件を所有しますが、この物件というのは、建物だけではなく土地も含まれています。一棟ものの投資でも、区分マンションの購入でも、固定資産税課税の対象となります。
固定資産税を支払う義務があるのは、「1月1日現在、土地、家屋及び償却資産の所有者として、固定資産課税台帳に登録されている方」と定められています。ただし、年の途中で不動産を売却しても、年始時点の所有者が固定資産税を全額負担することになってしまうため、実務上は決済日を基準に日割り計算を行い決済日以降の税額分は、買主が売主に支払うケースがほとんどです。
ちなみに、関東と関西で年度に対する考え方の違いが存在します。
関東:毎年1月1日~12月31日を1期として考える。
関西:毎年4月1日~3月31日を1期として考える。
意外と知られていないので押さえておきたいポイントです。
不動産投資の固定資産税は
いつどうやって払う?
マイホームなどと同様で、固定資産税は所得税とは違って申告する必要はありません。一般的には、年4回に分けた納税通知書が市町村から送られてくるので、記載されている納付期限内に支払います。固定資産税の支払い方法は自治体により異なりますが、たいていは以下の通りになっています。
1.金融機関や各自治体の窓口、コンビニエンスストアでの現金払い
各金融機関や自治体の窓口、コンビニエンスストアに納付書を持って行き、現金で支払うことができます。最も一般的な方法で、手数料がかからず、領収証書をすぐに受け取ることができる方法です。ただし、コンビニエンスストアでの支払いは納付書1枚あたり30万円までとなっているので、注意が必要です。
2.口座振替
納付書とともに送られてくる書面から、口座振替の手続きをすることができます。支払い忘れも回避でき、確実で安心な方法といえるでしょう。
3.ペイジーでの支払い
ペイジーマークが付いた納付書であれば、パソコンやスマートフォン、インターネットバンキングなどを通じてペイジー支払いを利用することができます。また、ペイジー対応が可能なATMから支払うこともできます。
4.インターネット経由でのクレジットカード払い
すべての自治体ではありませんが、各自治体の専用サイトや「Yahoo!公金支払い」を利用して、クレジットカードによる支払いができます。取扱い可能なカード会社が限定されている、自治体によっては納められる税額の上限がある、決済手数料がかかるなど注意点もありますが、ポイントが付与されるというメリットもあります。
5.電子マネー・キャッシュレス決済払い
nanaco、WAONなどの電子マネー、PayPayやLINE Payなどのスマホ決済サービス(東京23区内のみ)を利用して支払いすることができます。チャージや決済の際に、ポイントが付与されるため、お得に税金を納付することも可能です。
固定資産税を延滞すると
どうなってしまう?
固定資産税は、市町村税収の全体に占める割合が非常に大きい税金です。全国平均では市町村税収の約4割を固定資産税から得ており、小規模な自治体になるほどその割合が大きいという傾向があります。個人にかかる市町村民税よりも大きな税収であるため、固定資産税を延滞した場合の自治体側の対応は厳しいことが一般的です。固定資産税の延滞金は年度により変動しますが、納付期限から2か月以内なら年3%ほど、2か月を超えれば年9%ほどになります。
延滞金が高額であることに加えて、督促状が届いた場合の対応にも注意が必要です。督促状が届いてから10日間以内に固定資産税を納付しない場合、役所は強制的に不動産を差し押さえる権利をもっています。
参照:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/osirase/9205.htm
不動産投資における固定資産税の
税額は物件価格のどれくらいか
固定資産税の基本を押さえたうえで気になるのが、不動産投資で「固定資産税が1年間で、どれくらいかかるのか」ではないでしょうか。先に結論から申し上げると、固定資産税の目安はおおよそ「物件価格の約0.3%~1%」となります。物件の築年数や床面積によっても変わるため税額に多少の増減はありますが、1億円の物件であれば、おおよそ30万~100万円の間に収まると考えていて問題ありません。
もう少し詳しく見ていきましょう。固定資産税は、公示価格の70%を目安とした固定資産税評価額から課税標準額を求めて、標準税率の1.4%をかけて算出します。土地の固定資産税評価額は3年ごとに評価替えがあり、償却資産である建物部分の評価替えは毎年あります。
「課税標準額(固定資産税評価額)×標準税率(1.4%)」
注意すべきは建物と土地で固定資産税評価額の考え方が異なるという点です。
<建物の固定資産税>
建物の固定資産税=建物の評価額×税率(標準税率1.4%)
建物の評価額は、家の構造や広さ、設備や経年劣化によって影響を受けるため、非常に複雑な計算方法になっています。
・建物の評価額=評点1点あたりの価額×床面積×単位面積あたりの再建築費評点×経年減点補正率
※「評点1点あたりの価額」とは設備によって変わる価格
※「再建築費評点」とはその建物をもう一度建築した際にかかる費用
自分で細かい計算をするのはかなり難しいため、購入価額の70%を建物の評価額として概算する方法もあります。
<土地の固定資産税>
土地の固定資産税=土地の評価額×税率(標準税率1.4%)
土地の評価額は、路線価によって求められます。
土地の評価額=土地の面積×路線価
路線価とは、土地が面している路線の価値のことで、国税庁のホームページから路線価図を確認することができます。
以上のように建物の評価額を算出するのは非常に複雑なため、不動産投資の初期段階においては綿密に計算して慎重に行いたい場合は、専門家に相談するか物件の1%程度と高めに見積もっておく方が良いと言えるでしょう。
不動産投資の固定資産税が
経年で安くなるのは本当?
前項で少し出てきましたが、土地の固定資産税評価額は3年ごとに評価替えがあり、償却資産である建物部分の評価替えは毎年あります。
まず土地に関してですが、毎年最新の価格が公表される「公示価格」や「路線価」とは異なり、建物評価額の場合には家屋が所在する各市町村によって個別に調査が実施されるため、課税事務の簡素化の観点から3年ごとに評価額を見直す制度が設けられています。また、建物評価額の見直しについては、それぞれの自治体から委託された不動産鑑定士によって実施されています。
つまり、一般的には築年数が経過すると、経年劣化などにより建物の価値が下がり、固定資産税評価額も下がっていくことになります。このことから、新築物件に比べて中古物件の方が固定資産税が安くなるといえます。ただし「評価替え」自体は3年に一度実施されることとなるため、必ずしも毎年のように固定資産税が減少するということではありません。
さらに少し詳しく見ていきましょう。
建物評価額は、対象となる家屋を再度立て直した場合の建築費用を表す「再建築価格」を基準にし、「再建築価格」から経年劣化による損耗など、いくつかの影響を加減算することで計算されます。したがって、建物評価額については、その評価対象となる建物の構造や面積、所在地、築年数などの複数の要素によって変動します。一般的には「再建築価格」の50~70%程度が目安となります。建物評価額の評価替えについては、「再建築価格」に対し、経年劣化を反映する「経年減点補正率」や物価水準の変動を加味する「評点一点当たりの価額」などの要素を乗ずることによって行われます。
建物評価額=再建築価格×経年減点補正率
「経年減点補正率」については、家屋の構造や種類などによって補正率が区分されており、最大で80%相当が損耗したものとして評価額を圧縮することが可能です。なお「経年減点補正率」は必ず1.0未満で設定されることとなるため、建物評価額を引き下げる効果があります。
ちなみに、建物評価額の基準となる「再建築価格」については、建材費用の高騰や下落などによる物価水準の上下によって変動します。このような経済的な要素を適切に反映するため、以下の算式のとおり「再建築価格」に対して「評点一点当たりの価額」を乗じます。
建物評価額=再建築価格×経年減点補正率×評点一点当たりの価額
「評点一点当たりの価額」は、1円に「物価水準による補正率」と「設計管理費等による補正率」を乗じることによって算出され、木造家屋と非木造家屋に分けて設定されます。「経年減点補正率」とは異なり、物価水準を反映する「評点一点当たりの価額」については1.0を上回るケースもあるため、物価水準の上昇時には建物評価額を引き上げ、反対に物価水準の下落時には建物評価額を引き下げる効果があります。
「経年減点補正率」については20%未満となることはないため、経過年数に伴って補正率が最小の20%に達した場合、それ以降は何年経っても「経年減点補正率」によって評価額が下がることはありません。建物評価額を引き下げる「経年減点補正率」に対し、物価水準の上昇を反映した「評点一点当たりの価額」によって建物評価額を引き上げる要素が作用した場合には、評価額全体がさほど変動しないケースも十分考えられるでしょう。
このように「年数に応じて固定資産税は減っていくだろう」と安直に考えていたとしても、思うように建物評価額や固定資産税が減少しないケースも想定されるため、資金繰りにはくれぐれも注意が必要だと言えます。
物価が高騰すると
評価額も上がるは本当か?
前述の通り、物価水準が上昇し建築費用などが高騰することで「評点一点当たりの価額」が加味されるため、結果的に建物評価額を引き上げる効果が働くケースもあります。「評点一点当たりの価額」の上昇率が「経年減点補正率」の減少幅を上回る場合には、先述した計算式によって算定する建物評価額がかえって増加してしまう場合も考えられます。
ただし、固定資産税の計算においては、評価替えを行った場合の「最新の評価額」が「既存の評価額」を上回る場合には、納税者の税負担を考慮し、「既存の評価額」に据え置くこととされています。よって建築費用などが高騰した場合においても、それによって前回評価時よりも建物評価額が高まることや、固定資産税が増加に転じることはありません。
建物評価額を正しく理解して
固定資産税の負担に備えるべき
固定資産税の計算の基礎となる「建物評価額」については、不動産が所在する自治体によって評価が行われ、税額の通知によって納税手続きを行うため、具体的な計算方法を把握している投資家の方は決して多くはありません。「建物の固定資産税は年々減少する」といった誤った知識を持ってしまうケースもあり、それにより予想以上の税負担が発生する可能性も十分に考えられます。「建物評価額」の計算方法や、評価額を加減算する各要素を正しく理解することでより正確な納税予測やシミュレーションが可能となるため、適正な資金繰りや投資計画に役立てたいところです。
そしてなにより、大前提として固定資産税などの費用だけを注視するのではなく、そもそもの不動産投資自体の物件価値や利回りについて理解したうえで実施すべきです。
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