太陽光投資は不動産投資とどう違うの?~太陽光投資のメリットとデメリットを解説~
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持続可能な未来を実現する手段の1つとして注目を集める太陽光発電。環境保全に貢献できるだけでなく投資対象としても注目されていることをご存知でしょうか。実際、太陽光投資は初心者でも参入しやすいと言われており、比較的安定した収益が見込めます。
しかし、投資をするなら太陽光投資より「不動産投資」の方がメジャーでは?と考えられる方も多いかもしれません。そこで、今回は不動産投資との比較を交えながら「太陽光投資」について解説していきます。
太陽光投資に興味のある方や、どんな投資方法がよいかお悩みの方は是非ご参考ください。
そもそも太陽光投資とは
太陽光投資とは、ソーラーパネルで発電した電気を電力会社に売却し、利益をあげる投資方法です。「太陽光発電」と聞くと、住宅の屋根に設置された太陽光パネルを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、太陽光投資で使用するものはそれと異なります。
そもそも太陽光発電には2種類あり、両者は発電容量によって区分されます。投資などを目的に使われる「産業用太陽光発電」は、発電容量が10kW以上であるのに対し、一般的な住宅の屋根などに取り付けられる「住宅用太陽光発電」は10kW未満です。
また、太陽光発電は売却方法も2種類に分けられます。発電容量が50kW未満の場合、売却できるのは家庭内で消費された電力の余剰分のみ(余剰買収)ですが、50kW以上の出力ならば発電した電気を全て売却(全量買収)することができます。よって、10kW未満の「住宅用太陽光発電」は余剰買収のみとなり、「産業用太陽光発電」の中でも50kW以上の出力がある場合は、全量買収が可能となります。
次に、太陽光投資が不動産投資と大きく異なる点について触れていきます。不動産投資と異なる点として、太陽光投資は「FIT制度(固定価格買収制度)」や「FIP制度(Feed in Premium制度)」という制度のもとで運用することが挙げられます。これらは、太陽光投資をする上で大きく関わる内容になりますので、次章で詳しく解説していきます。
太陽光投資の運用に関わる「FIT制度」と「FIP制度」とは
「FIT制度」と「FIP制度」の違いは、売電収入が一定期間固定であるか、市場価格と連動して変化するかということです。投資で用いる「産業用太陽光」の場合、「FIT制度」では20年間固定価格で電力が買い取られますが、「FIP制度」では株式や不動産と同じように市場価格と連動して価格が決まります。
まずは、「FIT制度」について詳しく見ていきましょう。
1.「FIT制度」について
FIT制度とは、再生可能エネルギー(以下、再エネ)で発電した電力を、電力会社が国が定める価格で一定期間買い取ることを義務付ける制度です。再エネに関わる制度なので、太陽光に限らず、地力や風力などによる発電にも適用されます。FIT制度は2012年に導入され、再エネによって電力を供給する方は一定期間の安定した収入が約束されました。
そもそも、FIT制度は再エネ発電を行う事業者を増やし、再エネによる発電量増加を促すことを目的に導入されました。これまで主流であった火力発電や原子力発電は、環境への負荷および限りある化石燃料への依存が指摘され、世界的な問題となりました。そこで、再エネを利用した発電方法を普及し、環境への負荷を低減させるため「FIT制度」が導入されたのです。
しかし、再エネは設置コストが高く、収益が天候に左右されやすいなど幾つかのハンディギャップがありました。そこで、FIT制度では再エネで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束し、設備導入のハードルを下げたのです。
(経済産業省 資源エネルギー庁HP 参照https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/surcharge.html)
実際、「FIT制度」の制定により再エネの普及率は増加しました。資源エネルギー庁によると、FIT制度が始まる前(2011年)の太陽光発電による発電量は0.4%でしたが、2019年には6.7%に増加したと報告されています。世界的に見ても日本の太陽光発電の普及率は高く、2021年時点で日本の太陽光発電導入容量は世界4位で、世界全体の太陽光発電設備容量の3分の1を占めています。(参照:IEA「スナップショット2022」 https://iea-pvps.org/snapshot-reports/snapshot-2022/)
よって、太陽光設備の導入が進んだことから、FIT制度の狙いは概ね成功したと言えるでしょう。
しかし、電力会社が買い取りに要した費用の一部は電気の使用者から集められるため、毎月の電気代に上乗せされる再エネ賦課金が問題視されるようになりました。(下図参照)実際、再エネによる発電の普及に伴って賦課金による負担額は上昇しており、2020年時点での再エネ賦課金は電気代全体の12%に相当します。
このように、FIT制度は、国民の負担の上で成り立っていたため、太陽光発電が自立的な発電源として電力市場に参入するには新たな制度が必要になったのです。そこで、2022年に新しく制定されたのが「FIP制度」です。
▲経済産業省 資源エネルギー庁HP「再生可能エネルギー発電促進賦課金とは」より
2.2020年から導入が進む「FIP制度」とは
従来のFIT制度では、国が設備にかかる費用面をカバーしたことで、再エネの導入拡大が実現しました。しかし、FIT制度の下ではいつまでも国の補助に頼った形での運用になり、賦課金を賄う国民の負担が問題となりました。そこで、2020年 6月、再エネを電力市場へ統合する段階的な措置として「FIP制度」の導入が決まります。日本では導入されてまだ月日の浅い制度ですが、再エネの導入が進むドイツやデンマークなどのヨーロッパ諸国では10年ほど前から取り入れられています。
FIP制度の最大の特徴は、売電価格が市場価格と連動して変化するという点です。そもそもFIP制度とは、「フィードインプレミアム(Feed-in Premium)」の略称で、再エネ発電事業者が卸電力取引市場などで売電したとき、その価格に一定の補助額(プレミアム価格)が上乗せされる仕組みです。まずは、FIP制度の利益を決定する上で最も重要な「プレミアム価格」について見ていきましょう。
「プレミアム価格」は、「基準価格(FIP価格)」から「参照価格」を差し引いた金額です。具体的な計算式としては〈「基準価格(FIP価格)」-「参照価格」×kWh〉で算出されます。「基準価格(FIP価格)」は、基本的にFIT価格と同じで、20年間固定の金額です。一方、「参照価格」は市場取引などによって発電事業者が期待できる収入分のことで、昨年実績や市場価格に応じて1ヶ月ごとに変動します。
FIP制度は需要と供給のバランスに応じて買収価格が変動することから、収入が不安定になるように思われますが、プレミアム価格が市場価格に上乗せされるため、基本的にはFIT制度と同じくらいの収入になる想定となります。
また、FIP制度には3つの種類があり、上乗せされるプレミアム価格が固定の「プレミアム固定型FIP」、市場価格とプレミアム価格の合計金額に上限と下限が設定された「プレミアム固定型FIP(上限・下限付)」、そして市場価格の上下に応じてプレミアム価格が変動する「プレミアム変動型FIP」があります。最も使用されているのがプレミアム変動型で、イタリアやドイツなど様々な国で導入されています。具体的な内容については下記の図をご参照ください。
▲資源エネルギー庁「再生可能エネルギーの大量導入時代における政策課題と次世代電力ネットワークの在り方」(2017年12月8日)
画像引用元:https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/pdf/001_03_00.pdf
FIP制度が適用される設備は発電容量によって決められており、年度ごとにその範囲が拡大されています。2022年度において、FIP制度の対象となる発電設備は1000kW以上に限られていましたが、2024年度は250kW以上に拡大しました。一方、それより容量の小さな50kW~250kWの発電設備に関しては、任意でFIT制度も選択できるようになっています。
▲資源エネルギー庁「再生エネルギーFIT・FIP制度ガイドブック2023年度版」より
投資家の目線からすると、FIT制度は一定期間収入が保障されていることから、投資初心者でも参入しやすいというメリットがありましたが、FIP制度の場合は市場競争に参入しなければならず、太陽光投資に新規参入するハードルが高くなることが懸念されます。では、今後の太陽光投資のポイントとはいったい何なのでしょうか。
3.2024年における太陽光投資のポイントは?
FIT制度の期間が終了した発電設備は「卒FIT」と呼ばれ、FIP制度へ移行します。2023年の「卒FIT」該当者数は過去最多になると予測されており、本年度以降完全にFIP制度へ移行する可能性も高くなっています。
しかし、FIT制度は2019年まで施行されていたため、2020年以前に開始されたものについては従来通りFIT制度の固定価格が継続されます。よって、FIT制度が終了する前に売電権を持つ投資用太陽光発電物件を中古で購入すれば、従来通り安定した収入が得られることになります。中古発電所の場合、過去のランニングコストや災害、住民トラブルなどもわかるので、特に新規で太陽光投資に参入する場合は中古の太陽光発電設備が狙い目になるでしょう。
2022年ごろから太陽光投資市場では別事業への投資を機に発電所を手放したり、所有者の高齢化により資金を現金化するために発電所を手放す発電事業者が増え、少しずつ中古発電所が増加しています。とはいえ、太陽光発電所は売り手よりも買い手が多く、中古発電所の価値は依然として高い状態が続いています。よって、条件に合った設備をなるべく早く購入できるよう、希望する発電設備の条件を明確にするなどして事前に備えておくとよいでしょう。
太陽光投資のメリット
太陽光投資の概要について解説してきましたが、太陽光投資を行うメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。不動産投資との比較を交えながら解説していきます。
1.高利回りかつ安定した収益
メリットの1つ目は、高利回りかつ安定した収益が見込めることです。2023年10月時点で、大阪の賃貸住宅1棟(ワンルームタイプ)の期待利回りは4.4%ですが、太陽光発電の投資物件の平均的な利回りは10%前後となっています。また、太陽光発電の投資物件には土地代やシステム・設備の設置費用を合わせても表面利回りが10%以上になるものも存在し、太陽光投資は不動産投資に比べて高利回りであると言えます。また、FIT制度を利用することで電力の売却価格は20年間固定とになり、安定した収益が見込めることも太陽光投資のメリットであるといえるでしょう。
2.時代背景に適している
メリットの2つ目は、昨今の時代背景に適しているということです。現在、日本の人口は減少傾向にあります。2023年11月時点での日本の人口は1億2431万人で、前年同月と比べて約60万人が減少しました。(総務省当局「人口推計(令和5年(2023年)6月確定値、令和5年(2023年)11月概算値)」2023年11月29日公表 参照)
また、国土交通省が発表したデータによると、日本の人口は2008年の1億2,808万人をピークに減少し、2048年には9,913人と1億人を割り、2060年には8,674人まで減少すると予想されています。今後も日本の人口減少は深刻になる見込みです。
▲国土交通省「第1節 若者を取り巻く社会経済状況の変化(1)人口構造の変化」
不動産投資において、人口の減少は空室リスクに繋がり、収益に大きな打撃を与えます。しかし、太陽光投資は設備と太陽光があれば収益が発生するので、人口の増減が投資リスクに関わることはありません。このように、昨今の人口減少に影響を受けない点も太陽光投資のメリットであると言えるでしょう。
また、昨今はSDGs(Sustainable Development Goals)やカーボンニュートラルなど環境保全への取り組みに注目が集まっています。すでにご存知の方も多いと思いますが、SDGsとは、2015年の国連サミットにおいて全会一致された、2030年までに持続可能な世界を目指す国際目標です。太陽光発電は二酸化炭素の排出量を減らし、化石燃料を節約できることからSDGsを支える発電方法であると言えます。また、日本では、温室効果ガス(GHG)の排出を全体として実質ゼロにする「カーボンニュートラル」に取り組んでおり、2030年までに2013年度比で46%減、そして、2050年までにカーボンニュートラルの達成を宣言しています。環境保全にむけて取り組みを行なう企業も多く、企業のイメージアップにつながることも太陽光投資のメリットであると言えるでしょう。
3.処分方法が比較的簡単
メリットの3つ目は、処分方法が比較的簡単であるということです。太陽光発電の設備はおよそ20年から30年が寿命であると言われています。状態にもよりますが、一般的に20年間使用した発電設備は20万円前後で売却可能です。新品の設備の方が状態が良く、発電量も多いという利点はありますが、中古設備は過去の稼働実績や発電量が明確であり、買い手から相当数の需要が見込めます。よって、太陽光投資は出口があり、不要になった設備の処分先に困ることが少ないことがメリットです。また、設備と同時に土地も手放すことができるため、出口を見据えて投資をしたいという方におすすめの投資方法と言えます。
太陽光投資のデメリット
比較的安定した収益が見込めるなど、太陽光投資には様々なメリットがありました。一方で、太陽光発電ならではのデメリットも存在します。
1.収益は天候に左右される
太陽光発電の最大のデメリットは、天候の影響で収益に差が出てしまうということです。太陽光発電で最大出力が出せるのは、気温や気候など様々な条件が揃う必要があります。天候の変化は人間の力で制御できないため、毎月の発電量が予測できないというデメリットがあります。しかし、毎月の発電量は上下するものの1年を通して見るとあまり変わらないことが太陽光発電の特徴でもあります。
また、太陽光発電は強風などによって近隣に被害をもたらした場合、賠償責任を問われることがあります。2021年2月時点で、産業用太陽光発電における火災保険の加入率は低圧で77%、高圧/特別高圧で82%と多くの人が保険に加入しています。(株式会社三菱総合研究所 令和2年度エネルギー需給構造高度化対策に関する 調査等事業(太陽光発電に係る保守点検・保険の動向 等に関する調査)報告書より)火災保険以外にも、さまざまな損害保険がありますので、もしもの時に備えて各種保険内容を確認・検討すると良いでしょう。
【損害補償の例】
●「動産総合保険」
…火災保険の1つ。破損や盗難、自然災害(火災、風災、落雷)などによる損害を補償。
損害を受けたものに対する補償金だけでなく、被害を受けた物を片付ける費用や損害防止のための費用も補償。
地震・水災による損害は対象外。(ただし、保険会社によって内容は異なるため各保険内容を確認しましょう。)
●「施設賠償保険」
…太陽パネルが飛散して「他者」や「他人の建物」に損害を与えるなど、第三者に対する被害を補償。
●「休業補償保険」
…太陽光発電システムが自然災害などで損傷した場合、その間の売電収入の低下などによる損失を補償。
2.初期費用・設備費用が高い
産業用設備における太陽光投資の初期費用は、およそ500~1000 万円以上で発電量が増えるほど費用は高くなります。産業用設備の場合、パネルを置くための台や、パワーコンディショナーと呼ばれるソーラーシステムを稼働させる機械など、パネル以外にも様々な費用がかかることから、初期費用が高額となる傾向があります。不動産投資の場合、条件にもよりますが初期費用の目安は80~100万円ですので、不動産投資と比べても初期費用が高額であることが太陽光投資のデメリットと言えるでしょう。
3.寿命が短く、資産として残りにくい
太陽光システムの寿命は20年から30年と言われており、それ以上継続して投資をする場合は、発電システムの部品を交換する必要があります。不動産投資の場合、購入した土地は永年貸し続けることができますが、太陽光投資の場合は不可能です。よって、長期的な投資を考えている方にとって太陽光投資は不向きな投資方法であると言えます。また、最終的に太陽光発電の設備は破棄するか売却することになるので、資産として残りにくいこともデメリットとして挙げられます。しかし、土地やマンションのように処分に手間を取りたくないという方にはメリットになるため、どのような目的で投資をしているかによって捉え方は変わってくるでしょう。
太陽光投資についてまとめ
今回は、不動産投資との比較を交えながら「太陽光投資」についてお話しました。FIT制度やFIP制度の上で運用するなど、太陽光投資は不動産投資と異なる点があります。それぞれにメリット・デメリットはありますが、昨今の人口減少に左右されず、環境保全にも貢献できる太陽光投資は、今後より注目を集める投資方法になるかもしれません。
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