2024年の公示地価がついに発表! 不動産投資にも重要な地価推移を考える

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2024年の公示地価がついに発表! 不動産投資にも重要な地価推移を考える

2024年3月26日、国土交通省は全国およそ2万6000地点を対象に1月1日時点の価格を調べた「地価公示」の結果を公表しました。全用途の全国平均は前年比2.3%上がり、伸び率はなんとバブル期以来33年ぶりの高さとなっています。

 

住宅地は全国平均で前年比2.0%上昇し、91年(10.7%)以来の上昇幅です。都市中心部や利便性・住環境に優れた地域で堅調な伸びを見せたほか、最近よくニュースでも目にする北海道富良野市など外国人にも人気の高いリゾート地では、別荘やコンドミニアムなどの需要が増えて高い伸びとなりました。商業地は平均で同3.1%上昇し、上昇幅は2020年と同水準でした。人の往来が戻った観光地や繁華街で、地価の大幅な回復がみられます。

 

今回の発表で3年連続の上昇となった公示地価。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて2021年に下落した地価は、経済が正常化していく過程で住宅地、商業地ともに回復し、国交省は「一部に例外はあるものの、全国的にほとんどの地点でコロナ前まで戻りきった」と述べています。

 

そんな、不動産投資の将来性を考えるうえでも重要な指標になる公示地価。公示地価が上がると私たちの生活にどんな影響があるのか。また、地価が特に上がっている地域はどこなのか。今後の不動産投資はどう考えるべきか。今回の記事では、公示地価の基礎知識についていま一度おさらいしたうえで、これまでの地価推移を振り返るとともに、2024年最新の上昇率ランキングをご紹介。今後の見通しについても考えていきます。

そもそも公示地価って何?
公示地価の基本をおさらい

 

まずは、公示地価とはどういうものなのか?国土交通省の資料では、「地価公示(公示地価)は、地価公示法に基づき、国土交通省土地鑑定委員会が、一般の土地の取引価格の指標とするなどのため、都市計画区域等における標準地を選定して、毎年1月1日時点の1㎡当たりの正常な価格を判定し公示するもの」とされています。

 

ひらたく言えば、公示地価とは国(国土交通省)が発表している土地の価格のことで、この価格は土地売買などの取引において「目安」として使われたり、公共事業などのために土地を取得する際の価格算定基準になっています。国土交通省内に設置されている土地鑑定委員会が、地価公示法に基づいて標準地(価格を公示する地点。その地域の標準的な土地が選ばれる)の鑑定評価を行い、毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を3月に公示しています。この公示地価に関する調査は1970年から始まりました。

 

公示地価の調査方法は、標準地に対して2人以上の不動産鑑定士が、最新の取引事例やその土地からの収益の見通しなどを分析した上で「通常成立すると認められる価格」を鑑定するというもの。その結果を土地鑑定委員会が審査し、必要な調整を行った上で公示地価を決定します。このように、誰か特定の人物が決めるような基準でなく、客観的な基準を定めたうえで、できるだけ公正を保つように取り組まれています。全国には約26,000の標準地があり、公示地価は標準地1平方メートルあたりの価格で表されます。

 

ちなみに、公的機関が発表している土地の価格には、公示価格以外にも「基準地価」と「路線価」があります。

 

 

 

基準地価は都道府県が調査するもので、公示地価の補完的な役割があります。路線価は相続税や贈与税を計算するときの基準になる価格で、公示地価や基準地価と比べると調査地点数がかなり多くなっています。路線価の算出には公示地価も用いられていて、路線価※は公示地価の8割程度になるという特徴があります。※相続時路線価の場合。なお、市町村や東京23区が算出する固定資産税路線価については、公示地価の7割程度になる。

 

 

公示地価はなぜ変動する?
不動産投資における上昇メリットは?

 

公示地価のおもな変動要因としては、「金融緩和による金利の下落」や「インフレ懸念(不動産はインフレヘッジ資産と考えられるため)」「好景気による不動産需要の増大」などの上昇要因と、「長期金利の上昇」「企業収益や個人所得の低迷」「災害などによる資産価格の下落」といった下落要因が挙げられます。このため、公示地価は、景気や経済動向をはかる重要な指数としてもしばしば取り上げられることがあります。

 

災害や金融緩和などの外的要因をのぞいた場合で考えるなら

 

・公示地価が上昇する
土地の再開発や人口増加・インバウンドなどによってエリアの人気が高くなる=需要の増加

 

・公示地価が下落する
人口や観光客減少によってエリアの人気が低くなる=需要の減少

 

となります。

 

公示地価は大きく分けると住宅地と商業地の2種類があり、どちらも人口増加や人流回復は地価上昇の大きな要因になります。今回の発表でも日本の都市部では地価が上昇していますが、インバウンドなどで注目を集めるエリア以外の地方部、過疎化している地域では地価が下落しています。人口が減ることで高齢化が進み、その地域の経済活動が停滞し、地元企業や観光業も低迷するなど、いわゆるドーナツ化減少が深刻な問題となっていることが、公示地価からも見て取れるでしょう。

 

公示地価が上がると、不動産投資家にとっては、物件の資産価値が引き上がり、不動産ローンの債務状況も改善されるメリットがあります。固定資産税も上がりますが、それを上回るメリットがあるのです。日本における不動産の価格割合は、一般的に土地:建物=3:1といわれています。土地の方が比率が高い理由は、土地は劣化せず半永久的になくなることがない一方で、建物は経年劣化しますし、天災や火事などで失われる可能性があるからです。

 

 

2024年(令和6年)最新の
公示地価の動向について知る

 

 

3月26日に発表された2024年公示地価は、全用途平均・住宅地・商業地すべてが前年よりも上昇していました。上昇は3年連続で上昇率も拡大しています。

 

出典:令和6年地価公示の概要(国土交通省)

 

新型コロナウイルスの影響によって2021年(令和3年)に全国的に下落した公示地価ですが、翌年には需要が回復しそれ以来3年連続で上昇が続いています。

 

全用途平均の上昇率は特に三大都市圏が3.5%と大きく、東京圏は4.0%となっています。地方圏全体の上昇率は1.3%でしたが、そのうち地方四市(札幌・仙台・広島・福岡)は7.7%と大きく上昇していることがわかります。

 

住宅地で見ると、全国平均上昇率は2.0%、三大都市圏はすべて上昇率が拡大しました。都市中心部など利便性が優れているエリアの人気は依然として高いことがうかがえます。また、都市部以外でも上昇範囲は拡大しており、特に地方四市(札幌・仙台・広島・福岡)は7%という高い上昇率となっています。これは鉄道新路線等が開業したエリアや、冒頭でも取り上げたように外国人からの人気が高いリゾートエリアには上昇率が高い地点があったからだと推察されます。

 

商業地の全国平均上昇率は3.1%となりました。住宅地よりも上昇率は高く、三大都市圏は5.2%、地方圏は1.5%となっています。特に上昇率が高かったのは東京圏で5.6%、地方四市で9.2%です。都市部を中心に人流回復が見られたことや、オフィス需要も底堅く推移したことが上昇の大きな要因となっています。マンションとの用地取得競合があり、結果的に高く上昇した地点もあったようです。さらに、こちらも大きくニュースで取り上げられたいた大手半導体メーカーの工場が進出する地域は住宅地・商業地・工業地ともに高い上昇がありました。

 

全体的に上昇傾向にある公示地価ですが、地方では下落した県も多くあります。公示地価変動率が下落した県は、栃木・群馬・新潟・福井・山梨・岐阜・静岡・滋賀・奈良・和歌山・鳥取・島根・徳島・香川・愛媛・高知・鹿児島でした。

 

より詳しく全国の公示地価を調べたい人には、読売新聞オンラインがおすすめです。「3Dマップで見る 全国公示地価 2024年版(https://www.yomiuri.co.jp/topics/land-price/)」を検索すると、3Dマップで詳細な価格や上昇&下落率を調べることができます。

 

 

 

2024年(令和6年)最新公示地価で
最高価格・下落率の大きかった地点は?

 

 

公示地価全体の最高価格は、東京都中央区銀座4丁目2番4の山野楽器銀座本店で5570万円。富裕層の消費が好調で外国人観光客も増えたことが要因でしょう。この地点は18年連続で最高価格となっています。住宅地の最高は、東京都港区赤坂1丁目1424番1のマンションで535万円。アメリカ大使館に近い一等地で7年連続で1位となりました。

 

住宅地の下落幅が最も大きかったのは、福島県いわき市内郷内町前田37番15で前年比8.3%減の3万4100円。この他、石川県珠洲市や愛知県南知多町は人口減少が進んで需要が減り住宅地と商業地ともに下落幅が大きい結果となりました。

 

そのほかに、ここ1年での市場動向が顕著に現れたのが以下です。

 

<インバウンド需要>

全国の住宅地で最も価格が伸びたのは、北海道富良野市北の峰町4777番33で、前年から27.9%増の4万9500円。外国人による別荘やコンドミニアム用地の需要が旺盛だったことが要因です。同様の理由で、長野県北安曇郡白馬村大字北城字堰別レ827番36も19.5%増の1万5900円となっています。

 

実は2024年の公示地価変動率上位10地点のうち7地点が北海道という結果になっています。リゾート地は外国人からの人気が高く、外資系のホテルや民泊も続々と増えているようです。また、半導体メーカーが千歳市に拠点を置くことになった影響も大きくなっています。

 

<半導体特需>

また、半導体受託製造大手の台湾積体電路製造(TSMC)が生産拠点を置く熊本県菊陽町やその周辺では、関連企業の進出により住宅やホテルなどの需要が高まりました。熊本県菊池郡大津町大字大津字拾六番町屋敷1096番2外は、33.2%増の7万7000円で、全国の商業地で最も高い伸び率となっています。次世代半導体の国産化を目指すラピダスが工場建設を進める北海道千歳市でも高い上昇が見られています。

 

<物流需要>

オンライン通販の広がりを受けて物流施設用地への需要が高まったことで、高速道路へのアクセスが良い工業地で高い伸びがありました。千葉県市川市塩浜3丁目17番12は29.0%増の32万5000円と、全国の工業地で最も上昇幅が大きくなりました。千葉県は都内への交通利便性が良いことから船橋市や柏市も上位にランクインしています。

 

 

公示地価は今後どうなる?
公示価格の見通しについて

 

 

では、今後の公示地価はどう推移するのか、直近3年の上昇傾向がそのまま継続するのでしょうか。不動産投資を行ううえでも、公示地価の推移は非常に重要になります。今後の公示地価の見通しを考えるうえで、まずは過去の公示地価推移について見ていきます。

 

出典:毎日新聞

 

全国平均の地価は1991年(平成3年)をピークに、バブル経済崩壊によって急激に下落。その後31年間地価は低迷する状態となっていました。リーマンショックの直前に上昇する局面がありましたが、その後再び地価は下落が続きました。国のさまざまな経済対策も叶わず、地価の下落幅は縮小するもののプラスには転じませんでした。

 

2012年(平成24年)に誕生した第二次安倍内閣で経済政策アベノミクス=が掲げられ、これに呼応するように日本銀行は翌年から「異次元の金融緩和政策」を実施しました。この政策により地価は上昇、2015年(平成27年)に商業地の変動率がプラスマイナス0となり、翌2016年には全用途平均で変動率が0.1とプラスに転じることになりました。その後も金融緩和政策の継続により地価はわずかに上昇をつづけ、2021年(令和3年)のコロナ禍による落ち込みはありましたが、2022年、2023年と連続して全用途での地価上昇と上昇幅の拡大につながっています。

 

コロナ禍が世界経済に影響を与えたなかでも、日本の不動産市場の落ち込みが少なかったことは、2013年以来の金融緩和政策の効果の結果だと言えるでしょう。さらに円安効果もあり、とくに日本の大都市圏の不動産が海外投資家からも注目されたことも要因として上げられます。

 

以上のように、都市再開発やインバウンド需要など本来的な要因もさることながら、今後注目すべきはやはり日銀の金融政策でしょう。日銀は2024年3月19日の金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除を決めました。政策金利を引き上げるのは実に17年ぶりになります。同時に、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の撤廃も決定。2013年に始まった大規模緩和は事実上終了し金融政策は正常化に向けて新たな段階に入りました。

 

これまで海外投資家は、低金利下の日本で借り入れて不動産に投資する利点が大きかったと言えます。日本が本格的な利上げに移れば投資環境は変わるでしょう。実際にその兆候はすでに現れてきており、不動産サービス大手のジョーンズラングラサール(JLL)によると、23年の国内不動産投資額は前年比4%伸びた半面、海外からの投資額は32.5%減ったとのことです。また、海外だけに限らず昨今活況な株式市場や新NISAの導入など、他の金融商品に国内投資家の目が移りやすい状況にもあるかもしれません。

 

仮に円安がさらに深刻化すれば、金利を大幅に上げる決断をしなければならないケースもあり得ます。金利を上げれば国の歳出において国債の利払いが増えてしまうことから、歳出削減や増税も同時に行っていかなければなりません。例えば、消費税率が15%になったとしたら不動産の消費も落ち込んで価格が下落することは考えられます。金利を上げれば高金利と高税金のダブルパンチが一気に押し寄せるため、日本経済に大きなダメージを及ぼすものと見込まれます。

 

また、不動産市場を狙い撃ちした税制の改正にも注意すべきかもしれません。現在は住宅ローン控除や登録免許税や不動産取得税の軽減、新築住宅の固定資産税の減額等の様々な節税施策が存在しますが、不動産市場を鎮静化させるために、これらの税制優遇措置の終了もしくは変更はあり得ます。不動産流通を促進するための税制が見直されれば、不動産の取引件数が減少していき、価格は下落していくと予想されます。

 

ただ、金利は上がっても若干程度と推測されることもあり、インフレは長期化する懸念があります。先のことは誰にもわかりませんが、現状を踏まえると少なくとも今後1~2年先の価格高騰は続くものと予測されます。いずれにせよ、不動産投資においては公示地価といったわかりやすい指標だけに踊らされるのではなく、政府の金融施策など複合的な視点から市況を見極める必要があるのです。

 

 

公示地価だけではなく
社会動向も注視すべき

公示地価の基礎知識と2024年最新の公示地価動向を解説しましたが、いかがでしたでしょうか。

 

昨今の地価上昇によってお住まいの地域の地価が上がっていた、投資先の不動産物件のの価値が上がっていた、とい方も多いかもしれません。ただし、今後は日本のマイナス金利解除によって投資先として不動産の魅力が薄れるリスクもあるかもしれません。ただ、いずれにせよ不動産投資において重要なのは、物件のみならず市場の動向を注視しながら、再開発や人口増などによって需要が見込まれるエリアを知ることです。また、地方圏においては突出して地価上昇が見られる都市にも注目し、そのエリアで需要が高い物件を見極めることが大切です。

 

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