4月の相続登記義務化でどう変わった? 不動産投資への影響は?

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4月の相続登記義務化でどう変わった? 不動産投資への影響は?

今年2024年4月1日からスタートした相続登記の義務化についてご存知でしょうか。

 

これまで不動産の相続登記は任意で、登記をしないことも珍しくはありませんでした。その理由は、相続の場合は登記をしなくても第三者に対抗できるからでした。これが今春より見直され、相続に伴って発生した不動産の名義変更手続きが「義務化」されることになったのです。この制度により、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に名義変更をしないと10万円の過料を課せられることになりました。相続登記の義務化は施行前(2024年3月31日以前)に発生した相続についても適用対象になり、種別によらず全ての不動産が対象になるため、親族や自宅の住居はもちろんのこと、不動産投資家の場合は、収益物件などの相続についても備えておく必要があると言えます。

 

では、そもそもなぜ相続登記が義務化されたのか。不動産相続登記をしないとどうなるのか?今回はそんな不動産の相続登記についてご紹介してきます。

そもそもなぜ義務化されたのか?
相続登記義務化の背景

 

相続登記義務化の背景にあるのが、「所有者不明土地問題」です。民間の識者で構成されている「所有者不明土地問題研究会」の調査によると、2016年時点の全国の所有者不明土地の面積は410万ヘクタールにおよぶとされています。これは九州(368万ヘクタール)を上回る広さです。さらに、同研究会の推計によれば、何の対策も講じないまま推移すると、2040年には所有者不明の土地の面積は720万ヘクタールまで拡大し、国土面積の2割、北海道全土の面積に匹敵する規模に膨れ上がるという驚きの試算もされています。

 

所有者不明土地の増加には少子高齢化も大きく関係しています。土地の所有者が亡くなった時点で相続人が遠方に住んでいて、その土地を利用する予定がないといったケースでは、相続登記をしてしまうと固定資産税や都市計画税の納税義務が発生し、管理の手間もかかります。それを放置し相続登記をしないまま世代交代が進むことで、やがて「所有者が直ちに判明しない」または「所有者が判明しても所有者に連絡がつかない」状態となってしまうのです。これは、別の記事でご紹介もしている「空き家問題」にも通じます。

 

将来、このような土地が増大すれば、公共事業のみならず民間も含めた様々な事業の推進において土地の円滑な利活用に支障を来すだけでなく、所有者の探索や所有権の取得等に要する負担も増大するおそれがあります。このような所有者不明土地に関する問題を解消するため、2021年に不動産登記法が改正。2024年4月1日より相続登記が義務化されることになったのです。

 

 

義務化になった不動産相続登記
いつまでに行えば良い?

 

相続登記の義務化により、2024年4月1日からは、相続により不動産を取得した際は相続登記が必須となります。義務化になった相続登記の期限は、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内と定められています。遺産分割により不動産を取得した場合も相続登記が必須で、こちらも遺産分割から3年以内に相続登記をしなければいけません。注意しなければならないのは、相続登記が義務化された2024年4月1日以前に相続した不動産も対象になることです。義務化前に相続で取得した不動産に関しては3年の猶予期間があり、2027年3月31日までに登記を済ませる必要があります。

 

つまり、過去に親から譲り受けていた実家や山林などの不動産についても登記をしていないと法律違反に問われてしまうのです。地方では、親子同士で資産が自然に継承されてきた結果、いちいち登記を行っていない不動産が多数存在するでしょう。これらをすべて登記せよというのは、土地の所有者を明確にしていくためには絶対に必要な改正ではありますが、社会的な負担は膨大だとも言えます。

 

「相続なんてまだまだ先の話」だから大丈夫。不動産投資家の中にはそう考える人も多いかもしれませが、他人事ではありません。義務化するということは、当然、違反すると罰則が適用されるということになります。現在の制度では3年以内に登記をしないと10万円以下の過料を科されることになっています。また登記後に氏名や住所が変わった場合には変更手続きも義務化され、従わなかった場合には5万円以下の過料となるので注意が必要です。また、不動産管理会社を経営している場合で自宅を会社の所在地としているケースなどは、引越しをした際に法人の変更登記も行わなければならないのです。

 

 

絶対しないといけない?
相続登記をしない3つのデメリット

 

そんなわけで義務化となった相続登記ですが、登記しない場合には不動産投資において過料以外にもデメリットが出てきます。それは大きく分けると3つ。

 

1.不動産売却や不動産を担保にした融資ができない
2.権利関係が複雑になってまう
3.共同相続人の債務により差し押さえの可能性がある

 

 

1.不動産売却や不動産を担保にした融資ができない

そもそも、登記をしていない不動産は売却ができません。不動産は、委任状がある場合を除き、原則として所有者以外の売却が認められていません。ここでいう「所有者」とは、実際に所有している人ではなく登記簿上の所有者です。なので、相続登記をしないと登記簿上の所有者とみなされず、不動産の売却ができなくなってしまいます。また、相続登記をしていない不動産には担保を設定することもできません。実際に所有の実態があっても、不正防止のため、相続登記されていない人は不動産を担保にした融資を受けられません。相続登記をしないことで、不動産の売却や不動産を担保にした融資ができなくなってしまいます。

 

2.権利関係が複雑になってしまう

デメリットのふたつ目は、権利関係が複雑になる点です。相続登記をしない間にその不動産を共有している相続人の誰かが亡くなった場合、亡くなった人の共有持ち分がその次の相続人の共有分になります。簡単に言えば、共有名義人が枝葉のように増えていくということになり、印鑑が必要な当事者も増えていくのです。これはその不動産を取得したい場合だけでなく、その不動産が不要な場合でも同様です。権利関係が複雑になると、不動産の相続登記をするための手続きも複雑になり、あまり交流がない親戚と一緒に手続きをすることになり、トラブルの原因となります。特に子どもがいる場合は、自分が相続登記をしていないことにより将来的に子どもにも迷惑が掛かってしまうかもしれません。

 

3.共同相続人の債務により差し押さえの可能性がある

上記の権利関係と似た理由ですが、万が一借金などの返済を滞納している相続人がいる場合、債権者に不動産の相続持ち分を差し押さえられてしまう可能性があります。不動産は、「遺産分割協議」が終わるまで共同相続人が法定相続割合に応じて共有している状態になります。しかし、債権者は借金がある法定相続人の法定相続分を差し押さえることが可能です。たとえ、遺産分割協議が終わっていた場合でも、相続登記を済ませていなければ相続人は差し押さえした債権者に対して「不動産が自分のものだ」と主張することができません。不動産を差し押さえられてしまったら最終的に不動産の“全て”を取得したいと考えている相続人は、差し押さえをした債権者に対して債務者である他の相続人の借金を肩代わりして差し押さえを解いてもらう必要が出てきます。

 

 

このように、面倒で複雑だからと相続登記を放置していると、義務化による過料はもちろんのこと、今後の不動産投資や運用を行う上でさまざまなデメリットにつながってしまいかねません。

 

 

不動産の相続登記は
5つのステップで

 

では、相続登記は実施どうやって行えば良いのでしょうか。大きくわけて5つのステップで行います。

 

STEP1.「登記事項証明書」で登記簿を状況確認
相続登記を行う際、まず始めに行うのが対象物件の登記簿状況の確認です。まずは法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得する必要があります。登記事項証明書はの発行に際して「建物の家屋番号」と「地番」がそれぞれ必要になります。家屋番号や地番は、毎年届く固定資産税納税通知書または権利証に記載されているはずなので、確認してみてください。ちなみに、私道は固定資産税納税通知書に記載されないため注意しましょう。通知書が手元にい場合や私道の場合は、法務局で家屋番号や地番を調べることも可能です。

 

 

STEP2.被相続人と相続人の戸籍謄本等を収集
登記事項証明書で不動産の名義人が明らかになったら、次は相続関係を正確に把握するために被相続人と相続人の戸籍を収集します。亡くなった名義人が遺言書を残していない場合、相続登記は法定相続人全員で手続きを行う必要があるからです。

 

・戸籍謄本
・改製原戸籍
・除籍謄本
・附票

 

これらの中から、相続登記に必要な情報が記載されている書類を準備します。注意点は「亡くなった名義人に関しては、出生から死亡まで遡る必要があること」「戸籍謄本のみで必要な情報が不足してしまう場合、他の謄本も必要になること」です。戸籍謄本などは本籍地の市区町村役場で取得でき、遠方の役所から取得する場合は郵送による取り寄せが可能になっています。

 

 

STEP3.遺産分割協議書の作成
被相続人の遺言書がない場合、遺産は相続人全員で話し合う遺産分割協議で分配を決定します。その協議内容をまとめた遺産分割協議書の作成が必要です。遺産分割協議書には「どの不動産を誰が相続するか?」を明確にした上で、相続人全員の署名と実印での捺印が必要になります。※相続人が1人だけの場合は遺産分割協議書は不要です。

 

 

STEP4.その他の書類作成・収集

・被相続人に関する書類として「戸籍謄本」「住民票の除票or戸籍の附票」
・相続人に関する書類として「戸籍謄本(相続人全員分)」「住民票(名義人になる相続人分)」「遺産分割協議書」「印鑑証明書(相続人全員分)」「本人確認書類(相続人全員分)」
・不動産に関する書類として「固定資産税評価証明書」

が必要になります。多くの書類が必要なので、抜けがない様に準備しましょう。

 

 

STEP5.法務局で登記申請
必要書類が全て揃った段階で、名義変更を行う不動産の所在地がある法務局へ行って「登記申請書の準備&登録免許税の納付」手続きを行います。

 

登録免許税は不動産の固定資産税評価額の0.4%と定められています。例えば、不動産の固定資産税評価額が6,000万円の場合は24万円の登録免許税がかかります。固定資産税評価額は、公的機関から発行される固定資産税の納税通知書に記載されています。万が一納税通知書が手元にない場合は、対象となる不動産所在地の市区町村の役所で固定資産税評価証明書を取得することで評価額を調べることも可能です。

 

 

期限内に相続登記できない場合は
相続人申告登記制度の活用を

 

義務化によって、相続登記の期限は不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内と定められました。期間内の相続登記を免除される「正統な理由」として定められいるのは、以下の5点だけです。

 

①相続人が極めて多数で、かつ、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握などに時間を要する場合
②遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合
③相続登記の義務者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合
④相続登記の義務者が「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(= 配偶者暴力防止法/DV防止法)」第1条2項に規定する被害者その他これに準ずる者であり、その生命・心身に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
⑤経済的に困窮しているために、登記の申請費用を負担する能力がない場合

 

上記に該当しなくても、個別の事情により正当性が認められる場合もありますが、もし期限内に相続登記ができない場合は「相続人申告登記制度」を活用するといいでしょう。相続人申告登記制度とは、自分が相続人であること、相続が開始されたことを法務局の登記官に申する簡単な手続きです。

 

・長年相続登記がされておらず、相続人への連絡に時間がかかる場合
・遺産分割の際、誰がどれだけ遺産を相続するかについて確定しない場合

 

この2つを申告することで、審査を経て申告した相続人の氏名・住所等が職権で登記に付記され、相続登記を行ったとみなされます。相続人が複数いる場合でも、自分だけが申告しても問題ありません。

 

 

不動産相続登記義務化が
不動産投資に及ぼす影響

 

相続登記の義務化により、不動産の相続を受けた際は3年以内の相続登記が必須となりました。不動産投資のために購入した物件を将来相続したい場合も相続登記が必須となり、相続人が手続きすべき事項が増えました。

 

相続登記をしないままでいることで登記簿上の所有者と実際の所有者が違ってしまうと、自分が売りたいタイミングで物件を売却できない、不動産を担保に融資を受けられないなど不動産投資においてさまざまなデメリットにつながってしまいます。不動産の価値が上がっているときに物件を売却できないのは、不動産投資において大きな機会損失といえるでしょう。また、自分が相続登記をしていないことで、別の相続人ないしは第三者が登記を完了してしまい、勝手に投資用物件を売却されてしまう可能性だってあります。

 

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