不動産特定共同事業は危ない? J-REITとの違いは何?

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不動産特定共同事業は危ない? J-REITとの違いは何?

6月中旬に不動産投資関連でニュースになった「みんなで大家さん」の行政処分。処分が公表された6月17日の午後5時から24時間で、投資家四百数十人から解約の申し入れがあり、一連のファンドに対する解約請求の総額は28億円以上になりました。実は弊社今村不動産でも現在不特法の取得に向けて申請を進めていますが、実施に向けての綿密な契約や説明責任の徹底など、整備項目や体制強化を行う必要を改めて感じた事件でした。

 

「みんなで大家さん」は、不動産特定共同事業法(不特法)に基づいて組成された、個人投資家向けの不動産ファンドです。「不動産特定共同事業」は不動産を数人〜数十人でシェアして、その収益を配分するという仕組みで、少額から始められる不動産投資サービスとして、不動産投資家のなかでも検討や実施している方もいるのではないでしょうか。

 

同じように少額から始められる不動産投資サービスには、「REIT(リート)」や「不動産クラウドファンディング」などがあります。どれも数千万円や数億円など膨大な資金を準備することなく気軽に始められ、不動産投資に興味がある方なら一度は耳にしたことがあるでしょう。ただ「なんとなく知ってはいるものの、具体的な内容や違いまではわからない」という方も多いのではないでしょうか。そこで今回は「REIT(リート)」「不動産小口化商品」「不動産クラウドファンディング」の特性や違いについて解説していきます。

不動産特定共同事業とREIT
まずはその違いは押さえましょう

不動産特定共同事業とREITを簡単に比較したものが上記の図になります。これを念頭に置きながら、それぞれについて詳しく解説していきます。

 

 

実は2種類存在する
REIT(リート)について

 

REITとは、Real Estate Investment Trustの略で、元々はアメリカで生まれた仕組みを日本版としてアレンジする際に「J-REIT」という名前になりました。日本語に直訳すると『不動産投資信託』の意味になります。

 

簡単に仕組みをまとめると「企業が一般投資家から資金を集めて複数の不動産を購入し、運営することで得た利益を配当として分配する」ことになります。集めた資金は、オフィスビルや商業施設、マンション、物流倉庫などの購入に充てられます。このように不動産に投資され、そこで得た賃料収入や売却益を投資家に分配するため、不動産投資と勘違いされることがよくありますが厳密には投資信託の一種になります。

 

実際、J-REITは証券取引所に上場されていて、一般の方がそこで自由に売り買いすることが出来ます。また、日銀が金融政策としてETFの買い入れを行っていますが、J-REITも一部買い入れを行っています。証券取引所に上場することで、銀行融資ではまかないきれない量のリスクマネーを集め、また市場を通じて広く不動産に投資を募ってその収益を還元できる仕組みとなっており、我が国の不動産取引の流動性、安定性を高める上でも重要な役割を果たしています。

 

J-REITそのものは投資信託の仕組みですが、株式やETFと同じように毎日活発に売り買いがされています。投資家は、証券会社などに口座を開設することでJ-REAT(不動産投資法人)に投資をします。J-REAT(不動産投資法人)は、投資家から集めたお金で不動産を運用し、投資家はそれに対する配当を受け取ったり、時価の上昇によって資産価値を向上させ、その売却益によって利益を得たりします。

 

J-REITを購入する一般的な方法としては、「個別銘柄」「J-REIT ETF」「J-REIT ファンド」などがありますが、株式と同様に売買したい方は個別銘柄がおすすめです。

 

個別銘柄といっても詳しく分けると「単一用途特化型」と「複数用途型」の2種類存在します。単一用途特化型は「住居」や「商業施設」など、用途が1つの物件に投資する仕組みです。不動産の用途が決められているため、情報収集や動向の分析がしやすくなります。一方の複数用途型は「オフィス+商業施設」など、用途が2つ以上ある物件に投資する仕組みです。用途が2つ以上あることから、オフィスでは利益が少ないが商業施設での利益が大きいといったリスク分散が可能になります。

 

REIT(リート)投資の
メリット&デメリット

 

J-REATは、証券取引所に上場しているため、投資家が自由に参加することができます。自分の好きな銘柄を自由に売買することが可能で、資産の流動性が高く、投資を細かく分散させたり、少額から投資ができるといったメリットがあります。実際にREITで選択できる商品はさまざまで、戸建て住宅やマンション・アパート以外にも、オフィス、ホテル・旅館、病院などがあり、多岐にわたる商品を多くの方が利用しているため、売買が盛んにおこなわれています。

 

また、REITは金融市場で有価証券として売買するため、換金を素早く行えることもメリットかもしれません。現物不動産を売却した場合だと、換金できるまでに約3か月〜半年以上かかることも少なくありません。加えて、REITは流動性が高いため、購入した商品の値が上がったらすぐに売却でき、売却益を得やすいといった特徴もあります。

 

一方で、融資(ローン)が利用できず、投資法人の倒産・上場廃止リスク、元本割れリスクがあることがデメリットだと言えます。このあたりが、しばしば「リートはおすすめしない」といわれる理由でしょう。

 

現物不動産への投資は、金融機関の融資を利用できるのが魅力です。自己資金を上回る金額を運用できるので、少ない資金で効率的に資産を増やせます。しかし、REITへ投資する際には全額を自己資金で投資する必要があるので、資金が少ないうちは資産を大きく増やすのは難しいでしょう。また、REITは流動性が高く、株式と同じように価格が日々変動するため、購入時より価格が下落すると元本割れします。さらに、REIT=投資法人の倒産・上場廃止があれば、投資したリートの価格は大幅に下落する可能性もあります。

 

REITは経済情勢や不動産市場動向など、さまざまな要因に影響を受けます。将来の価格を正確に予測することはできません。もし損失が出ても生活に支障が出ないように、余裕資金で投資をすることが大切です。

 

J-REITとどこが違う?
不動産特定共同事業の特徴

 

不動産特定共同事業で扱われる商品は不動産小口化商品と呼ばれ「不動産特定共同事業法(不特法)」に基づいて運営されています。不動産特定共同事業の事業者は、原則不特法により国土交大臣、または都道府県知事の許可が必要です。そのため厳しい要件を満たした一部の事業所のみ運営していましたが、2017年に「小規模不動産特定共同事業」が新たに創設され、事業所に対する資本金の要件が緩和されました。とはいえ、認可が必要な不特法があるからこそ、投資家たちは安心した取引ができる制度になっています。

 

「投資を募って不動産を運用する」「少額から不動産投資ができる」という点はJ-REITと似ていますが、その性質は全く異なります。不動産特定共同事業は、現物不動産を商品とする不動産投資を小口化した商品に対して出資をします。また、商品は市場に公開されていないため、J-REITのように相場変動はほとんどありません。市場に公開されていない分、多くの不動産特定共同事業の投資商品は半年~3年くらいの運用期間が設けられ、その期間内で運用が行われるのが一般的です。また、投資先は不動産そのものになるため、様々な保証などを個別に柔軟に加えることができます。

 

不動産小口化商品には、主に匿名組合型と任意組合型があり、事業主体によって異なります。匿名組合型は事業者が事業主体となり、任意組合型は出資した投資家たちが共同で事業主体となります。なお、相続対策として活用できるのは任意組合型です。

 

不動産小口化商品の
メリット&デメリット

 

不動産小口化商品は、1口単位で投資できる金融商品です。マンションやオフィスビル1棟を個人で所有し運用するよりも、少額で投資ができハードルが低いのが特徴です。また、不動産のプロ厳選の物件が投資対象であることもメリットです。ディベロッパーなどの事業者が安定した収入が見込めそうな物件や、将来価値が上がりそうな物件を厳選しています。個人では特定できないような商業ビルや商業施設など、独自の情報が必要な物件にもある程度安心して投資できるでしょう。

 

また、前述の任意組合型の不動産小口化商品であれば、相続税の節税にもつながります。通常、現金や有価証券を相続した場合、相続した金額全てが相続税の対象です。しかし不動産小口化商品であれば、不動産を直接所有しているケースと同様の財産評価方法になります。つまり、不動産の相続税評価額が時価よりも低くなり、時価と相続税評価額の差額分だけ、相続財産を圧縮できるのです。そのため、相続税対策として利用できるのもメリットです。

 

一方で、

 

・空室リスクがあり、収益の受け取り頻度が少ない
・元本保証がなく、値下がりの可能性がある
・商品の選択肢が少ない
・実物の不動産投資と比較すると利回りが低い
・運用期間が終了するまで途中で解約できない商品もある
・物件を担保に融資を受けられないため、自己資金が必要になる

 

といったデメリットがあることも忘れてはなりません。

 

 

比較的新しい投資の形
不動産クラウドファンディング

 

厳密には不動産特定共同事業と同じですが、不動産クラウドファンディングは「不動産特定共同事業」のうち、「不動産特定共同事業法に基づく電子取引業務」にあたります。 通常の不動産特定共同事業と異なり、出資者の募集から契約締結までをオンラインで完結できる点が大きな特徴です。インターネットを介して投資家から資金を集め、集まった資金を元に、事業者が不動産を購入・運営します。得られた利益を各投資家に分散させる金融商品です。管理状況や築年数など物件に関わる情報も公開され、REITとは違っており投資物件は募集されている案件の中から自分で選ぶことができます。

 

不動産クラウドファンディングは、不動産小口化商品と同様に匿名組合型と任意組合型の契約があります。中でも多く用いられる契約方法は匿名組合契約です。匿名組合員となる投資家が事業者に出資し、その見返りとして事業の収益を分配してもらう権利を取得します。出資金の運用や業務の執行に関しては事業者が行いますが、株主のように重要事項の決定や取締役を専任するような権利はありません。一方、任意組合は複数の投資家が共同で事業を行います。全組合員が1つの組合契約を締結し、組合員も事業者も対等な立場にあり、事業者の重要事項に関する決定権があります。

 

 

小口から始められる不動産投資
結局どれがいいの?

 

違いはなんとなくわかったけど、結局のところどっちがいいの?そんな方は下記を参考にしてみてください。

 

<REITが向いている人>

REITは、証券取引所に上場しているため、上場株式と同様に証券会社に口座を開き、証券会社を通して売買取引します。そのため、株取引と同じようにリアルタイムで自由に売買することができます。値下がりしたり元本割れのリスクが高くなりますが、その分、相場が変動した時に売却することで高い配当金を狙うことも可能なため、大きな利益をあげたい方はREITに向いているでしょう。

 

<不動産特定共同事業が向いている人>

小口化された不動産を保有する不動産小口化商品は、REITと違って個人が現物の不動産物件を保有します。「任意組合タイプ」は、通常の不動産投資と同じ財産評価が受けられるため、相続税対策にもなります。小額投資で現物の不動産投資を始めたい、かつ相続税の対策として不動産投資を考えている方に向いているでしょう。

 

<クラウドファンディングが向いている人>

一番安いものだと1口1万円からの小額で不動産投資が始められます。誰でも気軽に参加できるため、初心者の投資家でも不動産のオーナーになることが可能です。また出資者を募集する際には物件の詳細を公開するため、物件を比較しながら投資する物件を選定できます。REITのように値動きをチェックする必要もありません。「1万円から不動産投資をはじめたい」「投資する物件を自分で選びたい」「運用に手間をかけたくない」という方におすすめの不動産投資方法です。

 

 

結局は自分の
不動産投資スタイル次第!

 

今後の資産形成や不動産投資方法を考えていく中で、あなた自身がどのような投資スタイルを望んでいるかによっても、投資先は大きく変わってくるのではないでしょうか。どれが得か、どれが儲かるか…といったものではなく、最終的には投資家の好みと、なにより信頼できる投資先かどうかの判断になります。

 

少額から始められる不動産投資サービス「REIT(リート)」「不動産小口化商品」「不動産クラウドファンディング」。それぞれの投資スタイルには特徴があり、それぞれの特徴やメリット、リスクを把握し、自分に合った不動産投資方法を選ぶ必要があります。また、はじめての不動産投資なので少額から…と考えている方でも、投資する理由や中長期的に見ると従来のように物件を所有する不動産投資の方が向いているケースもあります。

 

弊社今村不動産では、はじめて不動産投資をする、2棟目の投資先を検討されているといった初心者の方にも親身にアドバイスさせていただきます。投資物件のご相談はもちろん、投資戦略にお悩みの方もお気軽にご相談ください。

 

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