不動産の債務償還年数とは? 不動産投資で融資を有利にする方法

  • #金利
  • #不動産投資
  • #融資
不動産の債務償還年数とは? 不動産投資で融資を有利にする方法

債務償還年数とは、本来銀行で事業資金融資を審査するときに用いる指標のひとつで、審査する融資金を含めた債務(有利子債務と言います)の返済に何年かかるのか?を示す数値です。事業資金融資では債務償還年数(償還力)は10年以内であることがひとつの基準となります。この債務償還年数(償還力)、実は不動産投資の融資においても非常に重要になってきます。

 

そんな債務償還年数ですが、どのように年数を計算するのか、マイナス評価が投資にどう影響を与えるのかなどについて、詳しく理解している方は少ないかもしれません。そこで今回は債務償還年数について、融資が可否の判断になる年数の目安や注意点なども交えながら解説していきます。

不動産投資における
債務償還年数の考え方

 

まずは不動産の債務償還年数のその意味や構成要素についてご紹介します。冒頭にもお伝えしましたが、債務償還年数とは端的にいうと「金融機関から借りた借金を何年で返せるのか?」の指標を指します。

 

一般的に住宅ローンやリフォームローンのように自分の家に関わる借入では、給料など本人収入だけを考えて審査します。この場合は年間返済額が年収の何割か?という「返済比率(返済割合)」で算定します。例えば、住宅ローンの年間返済額100万円÷年収300万円=返済比率30%となります。

 

一方、アパート経営や賃貸マンションの区分投資物件などローンを借りて不動産投資を行う場合、融資の審査は債務償還年数(償還力)で算定します。不動産投資は事業と見なされるので、事業資金と同じく債務償還年数(償還力)で融資判断されるためです。償還力(債務償還力)とは「返済原資」で融資を何年かかって完済できるかを指します。返済原資=売上から経費を引いて最終的に手元に残るお金で、「借金を返済する原資」なので返済原資と呼び、一般的な個人事業主なら<税金支払後の利益(所得)+減価償却>となります。

 

減価償却は現金で払うわけではなく、あくまで税法上認められた理論上の経費なので、減価償却費に計上した金額は(正しく償却しているなら)実際には手元に残るべきお金であり、所得と一緒に返済原資とするのが基本です。

 

 

不動産の債務償還年数における
3つの構成要素

 

銀行から融資を受ける際に重要になってくる償還年数ですが、計算するにあたってどのような項目を見ればよいのでしょうか。債務償還年数の計算式に関わってくるのが3つの構成要素、すなわち「キャッシュフロー」「有利子負債」「正常運転資金」です。それぞれの要素の意味についてみていきましょう。

 

①キャッシュフロー

キャッシュフローとは現金の流れのことで、不動産投資ではとくに家賃収入や物件売却などで得られる収入から、税金や設備費用などの支出を差し引いた後に手元に残る資金(もしくは流出する資金)を指します。債務償還年数におけるキャッシュフローは、当期純利益(税引き後の利益)に減価償却をプラスすることで簡易的に算出が可能です。ちなみに、不動産投資における減価償却とは、時間の経過や使用により価値が減少する固定資産を指します。

 

時間の経過や使用により価値が減少していく固定資産は、購入費用をその耐用年数に応じて計上していきます。実際には毎月使われているわけではない経費なので、減価償却の分だけお金が出て行ってないことになります。ですので、その分を足して計算するとつじつまが合うようになるのです。

 

②有利子負債

有利子負債とは利息を付けて返す必要のある負債のこと。不動産投資では金融機関から融資されている全金額の残債(支払い終わっていない借金)を指します。借入金の残高が年間キャッシュフローと比較してどれくらい残っているかは、借金をどのくらいの期間で返済できるかに大きな影響を与えます。

 

③正常運転資金

正常回転資金とは、投資運営を続けるうえで必要な資金を指します。不動産賃貸の場合は物件取得費などの設備資金、会社設立のための資本金や書類作成費用、宅地建物取引士の資格取得や宅建協会加入費用、毎日の運営に必要な人件費や光熱費などが運転資金になります。しかし、銀行など一部の金融機関では不動産業の運転資金の融資に限っては、融資を拒否されるようです。何かを仕入れて販売する小売業や飲食業とは異なるため、運転資金が不要という考え方があるからです。

 

 

不動産投資で押さえておくべき
債務償還年数の3つの計算式

 

以上の3要素を組み合わせることで、債務償還年数を算出することができます。ただし、それ以外にも不動産投資における債務償還年数の計算式は主に3つあります。金融機関は、これらの計算式で算出された年数をベースに借金の返済能力があるかどうか客観的に判断します。

 

 

・債務償還年数=借入金の残高 ÷(税引後利益+減価償却費)

 

債務償還年数における最も基本的な式です。当期純利益は年間利益から税金を差し引いた手取り額のことで、純粋な利益を指します。実際には毎月使用されているわけでない経費である減価償却費を計上し、年数を算出する方法です。

 

・債務償還年数=(借入金の残高-運転資金)÷(税引後利益+減価償却費)

 

「借入金の残高」から「運転資金」を除いた計算方法です。事業を続けていく上で立て替え続けなければいけない経費である運転資金を、借入すべき金額として借入金の残高から控除したものがこの計算式です。原状回復費用や広告料、空室期間の家賃などが不動産投資の運転資金にあたりますが、運転資金の金額が大きい場合には、債務償還年数は短くできると考えられます。

 

・債務償還年数=(借入金の残高-運転資金-現金預金)÷(税引後利益+減価償却費)

 

3つ目は、運転資金を控除した借入金の残高から、さらに現金預金も控除して債務償還年数を算出する計算式です。現金預金の金額が大きいほど借入金を返却できる能力がある状態=借入金を返そうと思えば返せる状況にあると判断できます。そのため、現金預金の金額が大きい場合、債務償還年数も短くなります。

 

 

不動産投資における
債務償還年数の目安は20年

 

ここまで、不動産投資の債務償還年数について、その考え方や計算方法をみてきました。ここで疑問になるのが「不動産投資における債務償還年数は何年くらいが適正なのか?」でしょう。

 

一般的に債務償還年数は短いほど金融機関からの評価が高く、銀行によっては10年以内を指標とする場合もあります。とはいえ、不動産賃貸業は資産の購入が目的であり、借り入れに依存する事業であるため、一般的には基準を緩めて適用される傾向にあります。可能であれば15年以内、最低でも20年以内が債務償還年数の目安といえるでしょう。最近では45年という長期の償還年数であっても審査を通ることができるところもあるのですが、そのよう金融機関は少数派であると考えたほうが良いでしょう。

 

また、古い築年数の物件の場合、残存耐用年数内を基準に償還年数を設定している銀行もあります。残存耐用年数がなくなった場合の建て替えを想定していて、建て替え時にかかってくる多額の費用をまた融資しなければいけない点を考慮しているためです。そのため、償還期間が20年以上になってしまうと、返済能力を疑問視され信用格付にも大きく影響することになってしまいます。

 

 

債務償還年数を改善するための
不動産投資TIPS

 

特に複数の不動産投資をしていると、建物の建て替えやメンテナンスなどが必要となってきたタイミングで、再び融資が必要となるケースも多いでしょう。その場合は返済期間の長期化が考えられます。そのため、きちんと返済できるのかどうか、どの程度の期間で返済することができるのかを、銀行側から不安視されることになってしまう可能性があります。

 

債務償還年数が20年以上だった場合でも、絶対に融資がおりないわけではありません。ただし、融資において不利になるだけでなく、そもそもの不動産投資計画を見直す必要性があるかもしれません。そんな場合は、次の2つのポイントを抑えて対処すると、金融機関からの評価をより良いものに変えることが可能です。

 

 

① 有利子負債を小さくする

 

簡単にいえば「繰り上げ返済すること」もしくは「元金均等返済で借りる」方法です。繰上げ返済をすると、他の指標でマイナスになる可能性もありますが、手元のキャッシュが少なくなるため、ローン返済を早く済ませることが可能です。また、借入を元金均等返済にすることで、最初のうちは毎月の返済額が元利均等より多くなってしまいますが、その分元金を多く返していることになり元利均等よりは返済が早く進むため、債務償還年数の改善に効果的な方法と言えます。

 

② 経常利益+減価償却費を大きくする

 

収入を上げる&支出を抑える方法です。家賃収入を上げるには様々な状況や施策を考慮しなければなりませんが、支出を下げることは減価償却費の調整で可能です。減価償却費は支払い済みとはいえ必要経費なので、計上することによって経常利益は少なくなります。ただし、債務償還年数の指標上は、減価償却費を足し戻して計算するため、その後の減価償却により定められた耐用年数にわたって費用となり、資産計上して減価償却費で処理すれば債務償還年数に影響を与えません。

 

 

適正な債務償還年数を把握して
健全な不動産投資を行おう

 

債務償還年数は、返済能力の有無をチェックするための重要な指標です。融資が否決されるようでしたら、一度債務償還年数を計算してみましょう。特に、保有物件の債務償還年数が長期にわたるものだったり、耐用年数をオーバーしてると想定される築古物件である場合、融資が否決されてしまうこともあります。中古物件は返済期間中に建物の建て替えやメンテナンスなどが必要になり、再融資が必要となると考えられます。銀行側としては、これ以上融資できない。するのは危険な状態であると判断されるためです。

 

銀行側から貸倒れしてしまうことを不安視されない、安心して融資できる相手だと納得してもらえる債務償還年数に収めた賃貸経営が重要です。現在のキャッシュフローや投資をしようとする物件の築年数などを十分に見直し、できる限り債務償還年数を短くするようにしていきましょう。

 

今村不動産では弊社オリジナルブランド「OMI」で、新築アパートを随時全国に開発中です。また、自社開発物件のご紹介のみならず、提携士業との連携で融資に関するご相談も受け付けています。ご相談ご希望の方はぜひお気軽にお問い合わせください。

ピックアップ

不動産デベロッパーの知見を活かした不動産投資メディアサイト

不動産デベロッパーの専門知識から生まれる洞察力で、不動産投資家としての視点を磨きませんか?関西を中心に不動産開発を行う今村不動産株式会社が、不動産建築から市場分析、押さえておきたい法律、最新テクノロジー活用から実践的なアドバイスまで、あらゆる角度から不動産投資に関する情報をお届けします。あなたの不動産投資戦略を、より確かなものに。