日本政策金融公庫の融資で不動産投資 その条件や注意点について解説

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日本政策金融公庫の融資で不動産投資 その条件や注意点について解説

不動産投資を始めるにあたって最大の壁になるのが「金融機関から融資を引くこと」です。大抵の人は自己資金だけでは初期費用を賄えないため、どこかから融資を受けることになるはずです。融資と言えば真っ先に思い浮かぶのが民間の銀行や信用金庫ですが、実は政府が出資している「日本政策金融公庫」でも個人事業主に対して融資を行っています。しかも、幅広い方に比較的低い金利での融資を行っているので、特に不動産投資初心者の方にはひとつの選択肢になるでしょう。また、若い方や高齢の方、女性の方に優遇制度を用意しているなど、一定の方には優遇条件での融資を行っていることも特徴です。

 

とはいえ、すべての方にとって日本政策金融公庫での融資がベストな選択肢であるとは限りません。この記事では、民間企業にない日本政策金融公庫の特徴や融資を受ける方法について、詳しく解説します。

そもそも日本政策金融公庫とは?

 

日本政策金融公庫とは、日本政府が設立した特殊法人。2008年に、国民生活金融公庫・農林漁業金融公庫・中小企業金融公庫が統合され、今日の「日本政策金融公庫」となりました。日本政策金融公庫の目的は、一般の金融機関(銀行など)を補完し、国民生活を向上させることで、政府が100%出資している金融機関であり「日本公庫」とも呼ばれています。民間金融機関から融資を受けるのが難しい中小企業や個人事業主への融資を積極的に行っています。

 

日本政策金融公庫で受けられる融資は、固定金利かつ比較的低金利で利用できる点が特徴です。大手金融機関の相場が2%程度に対し、2024年5月時点での有担保の融資の金利水準は1.25%~3.05%となっています。また、保証人は不要で、団体信用生命保険の加入も任意になっているため、これらにネックがあり銀行などの融資が難しい方でも利用がしやすくなっている点も特徴です。

 

 

誰でもOK?不動産投資で
日本政策金融公庫の融資を受ける条件

 

実は、日本政策金融公庫では「不動産投資」を名目にした融資は実施していません。ただし、不動産賃貸事業が目的であれば、融資を受けることは可能です。融資の申請や審査の際には「不動産賃貸業」として手続きを進める必要があります。実際の運営や管理方法は投資や賃貸業と同じですが、申請時の名称が重視されます。日本政策金融公庫の融資は事業主に対しておこなわれるため、個人の投資家は対象外です。そのため、融資を受ける際には不動産賃貸業の事業主としての申請をおこなう必要があります。融資面談の時に「不動産投資」というワードは絶対に使わないようにしましょう。

 

もうひとつの条件は、取得予定の物件を担保に入れることです。担保に入れること自体は他の金融機関と同じですが、日本政策金融公庫の場合は担保評価が厳しいという特徴があります。物件の担保評価が通常の金融機関と異なるからか、通常の金融機関よりは融資評価が低くなる傾向にあります。他の金融機関であればフルローンがでるような物件でも2割の自己資金を求められることがあります。

 

また、日本政策金融公庫は政府による金融機関であり、税金や公共料金の滞納があると審査に通らない可能性が高いことも覚えておきましょう。

 

 

不動産投資の融資を
日本政策金融公庫から受けるべき人は?

 

上記の条件をクリアしていたとして、日本政策金融公庫の利点を生かして融資を活用できる人はどのような人でしょうか。ざっと3つのタイプが考えられます。

 

① 自己資金を多めに用意できる人

自己資金を多めに用意できる方であれば日本政策金融公庫での融資を検討する余地があります。

 

日本政策金融公庫の融資は、保証人が不要だったり、団体信用生命保険の加入も任意だったりと、一見利用しやすくなっているように思えます。しかし実際は、日本政策金融公庫の担保評価は民間の金融機関よりも厳しい傾向があり、融資額が他の金融機関よりも少なくなる可能性があります。審査基準が厳しくなる背景は、公的な機関であることから貸し倒れのリスクを下げるためです。そのため、融資を受ける際には、自己資金を十分に用意している必要があります。目安としては、自己資金を物件価格の3~5割を用意しなくてはなりません。3000万円の物件であれば900~1500万円程度。自己資金が多いほど、融資の審査に通過しやすくなるでしょう。

 

② 利回りの高い物件を取得する人

日本政策金融公庫から融資を引く場合であれば、高利回り(だいたい10%以上)の物件を持ち込めることが必要になってきます。上記にもある通り、日本政策金融公庫の融資は他の金融機関に比べて融資期間が短くなる=月々の返済が重くなります。自己資金を多く入れることで月々のキャッシュフローは多少改善しますが、それでもキャッシュフローがきつくなる傾向にあります。だからこそ、高利回りの物件を持つことで収益性を高め、キャッシュフローを改善する必要が生じます。高い利回りを持つ投資物件を選択していれば、融資の返済に関するリスクを抑えられるでしょう。

 

③ 女性あるいは、35歳未満の人と55歳以上の人

日本政策金融公庫の融資は、一般的な民間金融機関の融資では不利になりがちな、「女性」「35歳未満」「55歳以上」が優遇される措置があります。これらの属性の方は、特別利率が適用され、通常の金利よりも低金利で融資を受けられる点が有利です。ただし、この場合でも①や②の条件を全く満たさない状態だと融資を受けるのは難しなるので注意しましょう。

 

 

日本政策金融公庫から
不動産投資の融資を受ける流れ

 

簡単ですが、融資の流れについても触れておきます。

 

STEP.1 「事業資金相談ダイヤル」 に電話する
日本政策金融公庫では、融資に関する質問や相談を受け付けているので、まずは電話をしてみましょう。TEL 0120-154-505 (受付時間:平日9時~17時)

 

ウェブからの申込はこちらから可能です。
https://www.jfc.go.jp/n/service/apply.html

 

STEP.2 支店窓口を訪問する
創業計画書または事業計画書のわかる部分を記入し、お近くの日本政策金融公庫の支店を訪問すると、融資担当者からアドバイスを貰うことが出来ます。

 

STEP.3 必要書類を準備する
主な必要書類は以下の通りですが、物件により必要な書類が増えることもありますので、事前に担当者に確認しておきましょう。

 

融資に必要な書類一覧

・創業計画書または事業計画書
・最低でも半年分以上の預金通帳のコピー
・印鑑(実印)と印鑑証明書
・運転免許証など本人確認が可能なもの
・過去2年分の確定申告書または源泉徴収票
・不動産の賃貸借契約書(未契約の場合、見積りでも可)
・公共料金の支払い状況が確認できる領収書などを3ヵ月分
・担保を設定する場合は担保物件の登記簿謄本
・他にも借入金がある場合は、月々の支払額や借り入れ残高が確認できるもの

 

STEP.4 借入申込書と必要書類を提出をする
借入申込書に記入し、必要書類と共に日本政策金融公庫の窓口に提出します。郵送やオンラインでの提出も受け付けています。

 

STEP.5 面談を行う
借入申込書を提出すると、日本政策金融公庫から連絡が来るので、面談の日時を決めます。おおよそ1~2週間後に面談になり、時間は30分~1時間半程度です。提出した書類を元に担当者が質問されるので、答えられるよう準備をしておきましょう。

 

STEP.6 日本政策金融公庫内での稟議
開業予定地を担当者が確認し、また面談や提出書類を参考に融資審査を行います。融資を行うか否かの結果は、およそ1~2週間で通知が来るのが一般的です。

 

STEP.7 融資が決定する
融資審査に通った場合、融資契約をするのに必要な書類が日本政策金融公庫から送られてくるので、必要事項を記入し返送します。不動産会社の紹介の場合は不動産会社経由で、そうでなければ電話で直接、担当者から電話で結果を通知されます。金消契約等の締結日時の予約とその際の必要書類の確認を行います。

 

STEP.8 融資実行
日本政策金融公庫に書類が到着し、融資契約が完了すれば、指定の銀行に融資の振込があります(資料到着から3営業日後)。

 

STEP.9 返済開始
据え置き期間を選択している場合、期間中は利息のみを支払います。その後、元金の返済が始まります。

 

以上が融資の大まかな流れになります。不動産業者の紹介で融資を受ける場合は、不動産業者の指示に従って進めるといいでしょう。また、認定支援機関※を利用すれば、必要書類のチェックや、面談のサポートをしてもらえます。

 

(※)認定支援機関:
経営課題を抱えている中小企業や小規模事業者の相談・支援を行う士業(税理士、弁護士、公認会計士等)や企業のうち、「経営に関して専門的な知識を有し、一定の実務経験がある」と国から認定を受けた機関です。正式名称は「認定経営革新等支援機関」です。詳しくはこちらのURLをご確認ください。https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/nintei/

 

 

 

不動産投資の融資を
日本政策金融公庫から受ける時の注意点

 

うまく活用すれば利点がある日本政策金融公庫の融資ですが、判断を誤ると不動産投資の成果に対し大きなダメージを与えかねません。そのため、他の金融機関融資との違いについて理解したうえで融資判断を行うべきです。審査基準が厳しい傾向にあることに加え、注意しておきべきポイントは以下の2つです。

 

・融資期間が短いため、毎月の不動産投資ローンの返済額が大きくなりがち
日本政策金融公庫の融資は、返済期間が長くても20年のため、毎月の不動産投資ローンの返済額が大きくなる傾向があります。一般的な金融機関のローンなら、30年以上のローン返済期間を許容するケースもあるため、大きなギャップになるでしょう。

 

毎月の返済金額が許容範囲内で、自己資金も十分用意できている場合は問題ありません。そうでない場合、毎月の返済金額が負担にならないようにする点に注意が必要です。本当に日本政策金融公庫で融資を受けるのが良策なのか、不動産会社や専門家に相談してよく検討するようにしましょう。

 

 

・融資限度額が低くなる傾向にある
融資限度額も、その他の金融機関と比べると低くなる点に注意が必要です。日本政策金融公庫は公的機関であり、資金の使い道やリスクを十分に考慮し、公共の利益を保護する目的で融資限度額を引き下げる可能性があります。融資限度額が低くなると、希望する物件を購入ができないかもしれません。もし、融資限度額が希望に満たなかった場合は、他の資金調達手段を探すか、物件の価格や規模を見直さなければならないため、融資限度額が低くなる可能性を考慮しておきましょう。

 

 

日本政策金融公庫の融資は
よく考えたうえで検討したい

 

✔ 金利は1%前後と低め(担保提供蟻の場合)
✔ 返済期間は最大20年間と短い
✔ 営業目的が「不動産賃貸業」であることが融資条件
✔ 無担保の場合2,000万円が融資額の上限

 

不動産賃貸業を営むなら、比較的金利が低い日本政策金融公庫を利用するのはひとつの手段です。ただし、返済期間が他の金融機関と比べて特に短く、そのために物件購入にあたっては多くの自己資金を用意しなくてはなりません。返済シミュレーションの緻密性も肝心になってきます。運用中のキャッシュフローがきつくなりやすいのも公庫の融資の特徴なので、キャッシュフローを確保しながら物件を運用したい方は、他の金融機関を検討するといいでしょう。

 

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