一棟アパートを売却前にチェック! アパート売却の流れやポイント

  • #アパート投資
  • #ケーススタディ
一棟アパートを売却前にチェック! アパート売却の流れやポイント

アパート経営の魅力は長期的な家賃収入ですが、売却時に大きな利益を得られるチャンスもあります。家賃設定や入居者募集のノウハウはもちろん大切ですが、不動産投資でアパートなどの賃貸経営を行う場合、出口戦略のひとつである売却方法を理解しておくことも重要なのです。

 

アパートの売却は事前の情報収集が肝心です。下調べせずに手続きを進めると分からない手続きに戸惑ってしまうことも。アパートの売却は、流れ自体は居住物件の売却と同じように進みますが、注意点が異なります。取引額も大きくなるため、注意点はもちろん税金面のしくみも理解しておかなければ、損をしてしまうかもしれません。

 

この記事ではアパートを売却する際に身に付けておきたい知識や方法、価格の算出方法や高く売却するためのコツについてご紹介します。

なぜアパートを売却する?
アパート経営を取り巻く環境

 

アパートなどの賃貸経営をしていくうえで、避けて通れないのが売却です。ただし、アパートの売却タイミングはさまざまな観点からの判断が必要です。今が本当に売りどきかどうか、迷ってしまう人も多いのではないでしょうか。まずは、アパート売却のタイミングを探る一助として、売却の理由やタイミングについて考えてみましょう。

 

・キャッシュフローが悪化したため
不動産は経年劣化します。その結果入居者の確保が難しくなり、空室が増えたり、家賃を下げざるを得なくなったりするため、収益が下がります。また、年々高くなる修繕費がキャッシュフローの悪化を加速させてしまうでしょう。そのまま経営を続けていると、最悪の場合債務不履行に陥ってしまうこともあります。そうなる前に、アパートを売却するオーナーも少なくありません。逆を返せば、キャッシュフローが悪化する前に最適なタイミングでアパートを売却することが、不動産投資の出口戦略としては重要なポイントだと言えるでしょう。

 

・まとまった資金が必要になったため
アパート経営がうまくいっていても、まとまった資金が必要になったときは売却を検討します。アパート経営は長期的に安定した利益が得られますが、一攫千金は狙えません。起業や結婚、子どもの教育費用など、まとまったお金が必要になった場合には、アパートを売却して資金を確保するというケースもあるでしょう。資産運用全体のポートフォリオと照らし合わせながら総合的に判断すべきです。

 

・ライフスタイルの変化
ライフスタイルの変化も売却の理由になり得ます。アパートの管理は管理会社に任せられるとはいえ、月々の収支計算や管理会社とのやり取り、確定申告などは自分で行わなくてはなりません。病気や引っ越し、転職、高齢などの理由でアパート経営にかける時間や体力がなくなった場合もアパート売却に踏み切るタイミングのひとつかもしれません。

 

 

一棟アパート売却の流れは?
アパート売却方法とステップ

 

アパートの売却は次の流れで進んでいきます。

Step1.不動産会社に相談する

まずは、アパートの売却に対応している不動産会社を探します。ここでのポイントは、投資物件の取り扱いや売却実績が豊富な不動産会社を探すことです。

 

会社や担当者次第で、買い手が見つかるまでのスピードや売却価格はずいぶん変わってきます。過去の実績はもちろんですが、現状でホームページに投資物件が多く掲載されている不動産会社、なるべく自らの所有する物件に近しい売却実績がある不動産会社、買い手になり得る資産家とのつながりが多い会社に声をかけるようにしましょう。相談する不動産会社を決めたら、電話やメールでの問い合わせ、または店舗で担当者にアパートを売却する旨を相談します。

 

Step2. アパートの査定を行う

相談を受けた不動産会社はアパートを査定し、どの程度の価格で売り出すべきか見積もってくれます。不動産査定の方法は大きく分けて2種類あります。

 

1つは物件資料からおおよその価格を見積もる机上査。不動産の再調達原価をもとに対象不動産の試算価格を求める「原価法」や、賃料利回りから物件価格を算出する「収益還元法」、過去の同様の物件の取引を参考にする「取引事例比較法」などがあります。相場が分かる一方、いずれも物件を訪問せずに価格を算出する手法のため、特殊な事情を取りこぼす可能性がある点には注意が必要です。

 

査定方法のもう1つは、現地で物件を見てより正確な価格を見積もる訪問査定です。調査員が実際に現場を訪れ、机上査定の結果に現場で得られた情報を踏まえて総合的に不動産価格を判断します。査定が終了した後、不動産会社から査定価格報告書が提出されます。

 

自分でも相場をざっくり把握したい方は、国土交通省が運営する「土地総合情報システム」や民間企業が運営する「不動産ポータルサイト」など、インターネットでの情報収集が選択肢の一つです。ただし、アパートの適切な相場を把握するには、建物の劣化具合や土地の形状、日当たりなど多くのポイントを考慮しなければなりません。その際に参考になるのが、不動産会社が行う査定です。アパートに詳しい不動産会社ほど詳しく適切に査定してくれます。

 

Step3.媒介契約を締結する

売却を依頼する不動産会社と媒介契約を締結します。媒介契約を結んだ不動産会社が見つけた買主と売買契約が成立した場合に、仲介手数料が発生します。媒介契約は「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。媒介契約は売主と不動産会社の間で決める、売却活動における約束事のようなもので、契約方法によって制約や販売状況の報告回数などが異なるため、それぞれの違いを理解したうえで契約しましょう。

 

 

上記3種類の中で、売主の自由度が最も高い契約は一般媒介です。専任媒介と専属専任媒介は似ていますが、不動産会社に課せられる義務や売主への拘束力が異なります。後者のほうが不動産会社の責任が重く、売主への拘束力が強い契約です。

 

Step4.売却先を探し売買契約を締結する

不動産会社は媒介契約を結んだら、ポータルサイトやホームページ、チラシ、紹介などで不動産会社が物件を周知して、売却活動を行います。不動産売却は長期間に及ぶケースもあるため、買い手が見つからないときは、売主に相談の上、売値を見直すケースも少なくありません。また、内覧した購入希望者から値下げ交渉が入る場合もあります。

 

契約を結んだタイミングで「住人へのオーナーチェンジの通知」「電気・水道・ガス契約」「鍵」「住人から預かっている敷金」「アパートにかかわる書類」などの引き渡し準備を同時に行っておきましょう。

 

アパートの使用規約や維持管理費、固定資産税納税通知書などのアパートに関する書類が手元にあるのかを確認し、アパートローンがある方はローンの残高証明書を取得しておきましょう。登記簿謄本や測量図は不動産会社が用意するのが一般的です。

 

Step5.引き渡しを行う

引き渡し日には、決済とともに次の流れで引き渡しを行います。

 

・売主と買主の間で固定資産税などの税金を精算する
・不動産会社に仲介手数料を支払う
・抵当権の抹消登記を行う
・鍵や重要事項説明書を渡し、引き渡しを完了させる

 

アパートローンがある場合は、受け取った売却金でローンを全額繰り上げ返済したのち、抵当権抹消の手続きを行います。以上が、ざっくりとではありますが、ここまでが売却から引き渡しまでの流れです。

 

 

アパート売却に最適なのはいつ?
アパート売却のタイミング

 

アパート売却の流れはわかったが、ではいつ売れば良いのか?人が動く時期に居住物件が売れやすいように、アパートにもいわゆる“売り時”があります。

 

投資用のアパートを売却するときには、利益がでなければなりません。そのためにはより高値で売却することが必要となります。高値での売却には、アパートの状態や不動産会社選びが大きく影響します。そして、売るタイミングを逃さないことも大切です。アパートを売却するときには、アパートの管理状態をよい状態で保ち、信頼のおける不動産会社に仲介を依頼することでより高値で売却することができるでしょう。

 

アパート売却のタイミングとして、一般的には「所有期間が5年を越えたとき」「築年数20年を越える前」「入居率が高いとき」が良いとされています。

 

● 所有期間が5年を越えたとき

アパートを売却して利益が出ると、その額に応じて譲渡所得税と住民税がかかります。税率は物件の所有期間によって決まり、「短期譲渡所得(所有期間5年以下)」と「長期譲渡所得(所有期間5年超)」で大きく異なります。

 

 

参考:国税庁「土地や建物を売ったとき」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_3.htm

 

所有期間5年をボーダーラインとして税率に倍近く差があります。もし所有期間が5年近いのであれば、5年を超えて税率が下がってから売り出した方が手元に多くお金を残せる可能性もあります。ただし、築年数が経つことで売却価格が下がる可能性もあるため、見極めが難しいところです。どちらのメリットが大きいのか、不動産会社に相談のうえ検討した方が良いでしょう。

 

● 築年数20年を越える前

アパートの売却は資産価値と帳簿の面から見て、築20年までが良いとされています。資産価値は20年までは年々下がっていくため、築20年以内の売却を検討しているのであれば、早めに売却活動を始めましょう。

 

また帳簿上ではアパートの取得費用を「減価償却費用」として減らせますが、木造アパートは耐用年数である22年を超えると、計上できる額がぐっと減ってしまいます。節税効果が薄れてしまう前に今所有するアパートを売却し、新たに物件を購入するのも節税対策として有効です。

 

● 入居率が高いとき

購入希望者となる投資家が探しているのは、高い収益が得られる物件です。収益は入居率によって決まるため、アパート売却では満室状態のときが売り時だと言えます。購入希望者が見つかりやすいのはもちろん、高値での売却も期待できるでしょう。

 

逆に空室が多いのであれば、収益性が低いとみなされ売却価格も低くなる恐れがあります。空室が多い場合は不動産会社に相談して空室対策を行い、入居率を高くしてから売り出しましょう。

 

 

アパート売却の相場はいくら?
売却価格の妥当性を考える

 

上で少し触れましたが、アパートの売却をする前には、そのアパートの相場価格を知っておく必要があります。ネットを利用して調べることもできますし、収益還元法などを利用して計算することもできます。少し詳しく見ていきます。

 

●「土地総合情報システム」で調べる

土地総合情報システム」は、国土交通省が運営する不動産に関する情報を提供しているサービスです。安定的な不動産投資の促進や、不動産市場の活性化、安心・安全な不動産取引を行えるように情報が提供されているサイトです。

 

不動産の所在地や地図から検索することができ、取引価格や面積、形状などを知ることができます。絞り込みが難しいのが難点ですが、収益用のアパートなら、中古マンションで検索して構造を選べば絞り込むことができます。

 

●「レインズ・マーケット・インフォメーション」で調べる

「レインズ・マーケット・インフォメーション」は不動産流通機構が運営する不動産の成約情報を掲載しているサイトです。不動産会社が持つ不動産情報を登録することで、不動産取引の透明化を図っているものです。所在地から調べることができ、直近1年の不動産取引の面積や間取り、成約価格などを知ることができます。「レインズ・マーケット・インフォメーションでは」マンションや戸建ての情報を得ることができますが、土地に関する情報はありません。

 

●一括査定のサイトで調べる

不動産の一括査定を利用して、アパートの相場価格を知ることができます。一括査定のサイトでは、一度に複数の不動産会社に査定を依頼することができます。そのため、査定結果を比較して検討することができます。収益用の物件の売却の際には、その実績があるかどうかが重要になります。一括査定なら多くの不動産会社が提携されているので、その中から収益用物件の扱いの多い不動産会社を選び、査定価格をだしてもらうことができます。

 

●「楽待」「健美家」を使って相場を求める

「楽待https://www.rakumachi.jp/」は会員登録者数が32万人超、6万件以上の物件情報を掲載している国内最大の不動産投資情報サイトです。所有物件と似た条件で売りに出されているアパートの利回りを調べることにより、相場を把握することができます。

 

「健美家https://www.kenbiya.com/」は不動産投資および投資用物件情報サイトであり、5万件以上の収益物件価格情報を掲載しています。WEBサイトそのもののコンテンツに有意義なものが多く、不動産に関するさまざまな角度から知識を得ることもできます。

 

 

上記に加えて、計算式をもとに自分である程度の相場を算出することも可能です。算出方法は以下です。

 

 

●収益還元法で計算

収益還元法とは、収益用のアパートやマンション等の投資用不動産の査定価格を出すときに用いられる方法です。収益力に基づいて不動産価格を算出することができます。

 

不動産価格=1年間の純利益÷還元利回り

 

還元利回りの設定方法は、周辺地域の類似物件を参考にして設定するのですが、正確な還元利回りを調べることは困難な場合があります。そのときには、想定利回りを使用して算出することができます。
純利益とは、1年間の総家賃収入から、固定資産税や管理費用、修繕費用、火災保険料などのアパート経営にかかった費用を引いたものです。

 

●取引事例比較法で計算

取引事例比較法は居住用のアパートやマンションの価格を査定するときの用いられることが多い計算方法です。周辺の類似物件の成約価格を調べて坪単価を計算します。その坪単価に手持ちの不動産の面積を乗じて算出します。この金額に不動産の間取りや立地条件、方角などの条件を加味して不動産価格を算出します。

 

●原価法で計算

原価法とは、一度その建物を取り壊し、再び立てなおしたときにかかる費用(再調達費用)を計算し、建物の老朽化している分だけ引き(減価修正)不動産価格を算出する方法です。この方法は戸建ての建物部分の価格を算出するときによく用いられる方法です。収益用のアパートの建物部分の価格をだすときにも用いられることがあります。原価法で算出される価格を積算価格と言います。

 

再調達価格というのは、構造別に設定されており、その設定金額は金融機関によって異なります。まず、原価法で計算するには、再調達価格を算出することが必要になります。木造建築物で再調達価格が15万円/平方メートルとし、延床面積が100平方メートルの物件とします。

 

再調達価格 15万円×100平方メートル=1,500万円

 

ここから原価法での計算します。

 

積算価格=再調達価格×残存耐用年数÷法定耐用年数

 

ただしこの方法は構造別に計算しているので、その中の設備などの状況は計算に含まれていません。また、資材の価格なども考慮されていません。そのため、実際の価格とは大きく異なることがあります。

 

 

売却価格が高くても要注意
アパート売却にかかる諸経費や注意点

 

アパート売却時の費用や税金は、売買代金に比例して高くなります。項目や目安を事前に確認しておきましょう。

 

※1売却のタイミングによっては軽減税率が適用される
※2譲渡所得税の計算方法・税率は以下の通り
譲渡所得=売買代金-(取得費+譲渡費用)
譲渡所得税額=譲渡所得×税率

 

※2037年までは復興特別所得税が課されるため()内の税率が適用される

(参考: 『国税庁 No.7140印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで』)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7140.htm

(参考: 『国税庁 No.1440譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)』)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1440.htm

 

 

さらに、アパート売却時に知っておきたい注意点もいくつかあります。アパートの売却時は、収益物件として売り出すケースが一般的です。居住用の不動産とは違い、購入ターゲット層が投資家であることや各部屋に入居者がいるなど注意するべき点が異なります。

 

 

・敷金は新オーナーへ引き継ぐ
入居者のいる状態でアパートを売却することをオーナーチェンジといいます。オーナーチェンジの場合、所有権と併せて入居者と売主(現オーナー)が締結した賃貸借契約も買主(新オーナー)へ継承します。入居者から預かっている敷金は、入居者の退去時に返還するものです。売却時に買主へ引き継いでおきましょう。

 

・空室が多いと売れにくい場合がある
アパートの購入検討者は主に不動産投資家です。収益物件として売り出す場合、空室が多いと賃料収入を得られない(=賃貸需要がない)と判断される可能性があり、買い手探しに苦労するかもしれません。ただし、集客のために焦って賃料を下げるのはおすすめできません。賃料を下げると、物件全体の収入が減少し、売却価格に響くケースがあるためです。収益物件の査定手法の一つに直接還元法という手法があります。

 

・大規模修繕のタイミングか適切に判断する
アパート売却前に大規模修繕をするべきかお悩みの方もいるのではないでしょうか。大規模修繕は高額になるため、慎重な判断が求められます。売却前に修繕を実施すれば見栄えが良くなり、競合との差別化を図ることができます。売却期間の短縮につながるかもしれません。ただし、購入検討者の中には「割安な物件を購入して自分でリフォームしたい」という層もいるため、どちらが良いかはケースバイケースです。

 

・貸主都合による退去は難しい

アパートの売却方法には、オーナーチェンジの他、建物を解体後に更地として売却する、空室として売却する方法もあります。いずれのケースにおいても入居者に退去してもらう必要があります。ただし、入居者に立ち退きを依頼することは簡単ではなく、多額な立ち退き料が必要になることもあります。賃貸借契約の基本となる借地借家法は、借主(入居者)の立場を守るための法律です。住まいは生活する上で重要であるため、借主の権利が守られており、貸主が借主を退去させたい場合は正当事由が必要です。「売却したい」という理由のみでは正当事由として認められない可能性が高いでしょう。

 

 

 

売却の目的や売却後を考えて
アパート経営を行うべき

アパートを売却する際には、査定額だけに注目しがちです。そのため、最も高い査定額を提出した不動産会社に仲介を依頼してしまう方は多くいます。ただし、査定額が高い場合であっても、必ずその額で売却できるとは限らず、なかなか買い手が見つからないケースもあるでしょう。また、売却までに時間がかかる場合には値下げを決断しなければならないケースも少なくありません。

 

今村不動産では物件によっては数多くの仲介会社とのネットワークを通して、お客様にとって最適な売却相談先の不動産会社のご紹介が可能です。また、物件によってはオーナー様から直接購入の相談も受け付けております。アパート売却でお悩みがございましたらお気軽にご相談ください。

 

 

ピックアップ

不動産デベロッパーの知見を活かした不動産投資メディアサイト

不動産デベロッパーの専門知識から生まれる洞察力で、不動産投資家としての視点を磨きませんか?関西を中心に不動産開発を行う今村不動産株式会社が、不動産建築から市場分析、押さえておきたい法律、最新テクノロジー活用から実践的なアドバイスまで、あらゆる角度から不動産投資に関する情報をお届けします。あなたの不動産投資戦略を、より確かなものに。