不動産投資で繰り上げ返済はあり? 繰り上げ返済はタイミングが重要

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不動産投資で繰り上げ返済はあり? 繰り上げ返済はタイミングが重要

長期の債務から少しでも早く解放されたい、金利が発生しているので早期に返済することで総返済額を少しでも減らしたい。不動産投資を行ううえで、ローンの返済総額はできる限り少なくしたいと考えるものです。不動産投資開始時に契約したローンを予定よりも早く一部または全額を返済する繰り上げ返済をした場合は、元本を早く減らすことで返済負担を軽減できます。

 

ただし、実は必ずしも繰り上げ返済をしたほうが良いというわけではありません。この記事では、不動産投資で繰り上げ返済をするメリット・デメリット、するかしないかの判断基準、繰り上げ返済における注意点などを解説します。

不動産投資ローンの
繰り上げ返済には2種類ある

そもそもの話になりますが、不動産投資ローンの繰り上げ返済とは、ローンの借入残高を減らすために毎月の返済額にプラスして、将来返済する予定である元金を前倒しで返済することを指します。この繰り上げ返済ですが、大別すると2種類に分類されます。それぞれがもつ特徴とどんな人に向いているかをまずは覚えておきましょう。

 

<期間短縮型>

期間短縮型とは月々の返済額は変えずに、返済期間だけを短くする方法です。返済期間を20年でローンを組んだ場合、元金の一部を返済することにより18年や15年といった当初よりも早い時期にローンを完済できるでしょう。

 

繰り上げ返済によって元金が減ることで、当初の予定よりも完済までの期間が短くなり、かかる予定だった利息分も軽減されるため、残りの返済期間が長い場合に大きな効果が期待できます。一方、毎月返済する額は変わらないので、想定外の事態に対処できるよう手元にはある程度の資金を残しておく必要があります。

 

<返済額軽減型>

返済額軽減型とは返済期間を変えずに月々の返済額を減らす方法です。例えば、月々の返済額が10万円の場合、繰り上げ返済によって元金が減った分、毎月の返済額を減らすことができます。

 

返済額軽減型は毎月の支出を減らせるため、金銭的な負担を軽くでき生活にゆとりが生まれるでしょう。一方、返済期間は変わらないので利息額の大幅な軽減は期待できません。利息額をできるだけ減らしたい方は期間短縮型がおすすめです。

 

 

不動産投資ローンを
繰り上げ返済するメリット

 

 

上記でも述べた通り、繰り上げ返済をすることでローンの返済額や返済期間を変えることが可能になります。返済総額が減ったり返済期間が早まったりといったメリットの他にも、いくつかメリットがあります。

 

メリット1:トータルで支払う利息額を減らすことが出来る

繰り上げ返済の最も大きなメリットは、利息を含めた支払い総額が減ることです。ローンを利用する場合、借りた元金の他に元金にかかる利息を返済しなければなりません。毎月の利息額は元金に応じて決まるため、元金を減らせば利息額も減らせます。繰り上げ返済をすれば元金を減らせるため、最終的に支払う利息額が減らせるでしょう。ローンにかかる費用をできるだけ少なく抑えたい方は、繰り上げ返済がおすすめです。

 

メリット2:返済期間の短縮 or 毎月の返済額を減額

繰り上げ返済の種類に応じて、「返済期間の短縮」か「月々の返済額の軽減」のどちらかの効果を得ることができます。「期間短縮型」の場合は、返済期間が短縮できるので返済総額を減らせます。また、ローンを完済すると不動産を自分の資産にできます。新たな融資を申し込むときの担保として利用できるでしょう。積極的な投資を目指している方に繰り上げ返済はおすすめです。

「返済額軽減型」の場合は毎月の返済額を減らすことで支出が減り、生活に余裕が生まれ、次の投資のための資金作りが可能です。建物を維持するには定期的な修繕が欠かせませんが、繰り上げ返済をすると浮いた返済額を不動産の維持管理費に回せます。「返済額軽減型」の場合は

 

メリット3:金利変動リスクの軽減

融資を受ける際に、変動金利を選んでいた場合に金利変動の影響を受ける可能性があります。変動金利とは、借入期間中の金利が変動するタイプで、一般的に半年に一度見直しが行われます。ただし、金利が変動したとしても、一般的に月々の返済額は5年間変わることはありません。また、5年後の返済額は、その時点の元金残高・金利・残り返済期間から再計算されて決まります。

見直し後の返済額は、適用金利が大幅に上昇した場合でも直前の返済額の最大1.25倍までというルールがある場合が一般的ですので、見直し後の返済負担が大幅に増えることはありません。

ゼロ金利政策がいったん終了した日本では、今後徐々に金利が上がっていく可能性もあります。繰り上げ返済をして元金を減らしていくことでトータルの返済額が増えてしまうリスクを小さくすることが可能でしょう。

 

 

不動産投資ローンを
繰り上げ返済するデメリット

 

さまざまなメリットがある一方で、繰り上げ返済は状況によっては思わぬトラブルを招くことがある可能性もあり、慎重に決定しなければなりません。デメリットに関しても頭に入れておく方が良いでしょう。

 

デメリット1:手数料がかかる可能性がる

 

金融機関などによっても異なりますが、繰り上げ返済をする際の手数料を無料としているところもあれば、手数料を細かく規定しているところもあります。また、手数料がかかる同じ金融機関でも、借り入れ条件や繰り上げ返済の時期によって手数料が変わることもあります。

金利タイプが固定金利か変動金利か、借入日からの経過期間、一部繰り上げか全部繰り上げか、など条件によって手数料はまちまちです。融資を受ける際には、当初は予定していない場合であっても、繰り上げ返済時の手数料がどのように設定されているのか確認しておくことが大切です。

 

 

デメリット2:貯蓄額が減り急な支出に対応できない

 

繰り上げ返済は、手元に資金がある場合に行われますが、当然、返済した分のキャッシュが減ってしまうことは最大のデメリットといえるでしょう。重大な病気になってしまったり、子供を出産したりと様々なライフイベントに対する出費はもちろん、不動産投資をしていると、修繕回復費用など突発的な出費に悩まされることが多々あります。突発的な出費はいつ起こるかわからないので、ある程度の貯蓄をしておかなければいけません。「繰り上げ返済に気を取られすぎて、貯蓄が少なくなってしまった」というような事態にならないように気をつけるべきです。

 

デメリット3:レバレッジ効果が低くなる可能性

 

そもそもの金利が低い場合、繰り上げ返済の効果が薄い場合があります。資産運用はレバレッジ効果(小さな資金で大きな運用益を得ること)が重要です。不動産投資ローンの繰り上げ返済ができる余剰資金があったとしても、金利によってはレバレッジ効果が低くなる恐れもあります。例えば、1%の低金利ローンを繰り上げ返済するよりも、5%の利回りの投資信託へ余剰資金を投資したほうが、資産全体のポートフォリオには好影響をもたらすといった具合です。

 

利回りの高い物件を少ない自己資金で購入したときに最もレバレッジ効果は高まるので、利回りの低い物件に自己資金を投入するよりも、より利回りの高い物件を次に購入するための頭金として自己資金を投入する方が良いとも言えます。

 

 

繰り上げ返済すべきか否か
判断基準とタイミング

 

前述のメリット・デメリットを統合すると「繰り上げ返済をするには手元に十分な資金がある上で行うことが重要」ということが分かります。加えて、繰り上げ返済では「タイミング」を見計らうことも非常に大切になってきます。では、一体いつが最適な繰り上げ返済のタイミングだといえるのでしょうか。

 

タイミングとしてはずばり「早い方が繰り上げ返済の効果は大きい」と覚えておきましょう。ローン返済の総支払額を減少させることに重点をおくのであれば、返済のスタート時点からなるべく早期に繰り上げ返済を行うに越したことはありません。

 

早いうちに元金を減らすことができれば、それに伴う利息軽減が可能です。銀行によってサービス内容は異なりますが、普通預金が一定額以上に達したら自動的に繰り上げ返済にまわして支払うシステムなどもあります。今後物件の追加購入予定がなく、できるだけ節約したいという方にとってはお勧めかもしれません。繰り上げ返済を行う時期や金額によって総返済額にどれほどの幅が開くのか、シミュレーションサイトを上手く活用して、数値を明確にしておくのもポイントです。

 

そのうえで、繰り上げ返済すべきか否かを判断する基準についても、自分なりにルールを定めておくことをおすすめします。

 

判断基準1:余剰資金があるかどうか

 

手元に余剰資金がない、または繰上げ返済後に十分な緊急資金が残らない場合は、繰上げ返済を控えるべきです。繰上げ返済後も十分な流動性を保つことができるかどうかを検討する必要があります。緊急時の支出や他の投資機会への資金が必要になる可能性も考慮に入れるべきです。

 

繰上げ返済に使用する資金を、他の投資に回した場合の期待リターンと、そのリスクを評価します。ローンの利息率が市場平均リターンより低い場合、繰上げ返済よりも他の投資機会を優先することが合理的です。

 

繰上げ返済は、個々の財務状況や投資目標に応じて慎重に検討すべきです。特に、余剰資金がない場合は、繰上げ返済を控え、他の財務的優先事項に注力することが賢明です。また、税務専門家や財務アドバイザーと相談することも、適切な判断を下すための重要なステップです。

 

 

判断基準2:利益の再投資による効率化を見る

 

既存のローンを早期に返済することは、将来の融資取得時に信用力を高める効果がありますが、同時に手元の資金を減少させます。これにより、新しい物件の購入に必要な頭金や、その他の投資に関する費用を捻出する能力が低下する可能性があります。また、低利のローンを活用して投資を行う(レバレッジを利用する)ことは、不動産投資において一般的な戦略です。繰上げ返済を行うと、このレバレッジ効果を減少させることになります。

 

節税効果によるプラス面や、物件を複数所有する人が売却益を得た場合、余剰資金を繰り上げ返済に回すことで「不動産投資で得た利益を再投資する」ことが可能です。資産運用の効率化(複利効果)が見込める場合は、繰り上げ返済をするのも一つの方法でしょう。追加で物件購入予定がある場合や、繰上げ返済の効果が薄い場合は繰上げ返済をしない方が良いと判断できるでしょう。

 

判断基3:運用資産ポートフォリオを見る

 

不動産投資ローンの繰り上げ返済には、将来的に支払うはずだった利息を減額したり、完済が早まることで次の物件投資に目を向けたりできるなど、資産拡大の機会ともなり得ます。一方で、不動産投資以外の資産も含めた資産全体のポートフォリオに、どのような影響をもたらすのかという視点も忘れてはいけません。

 

 

繰り上げ返済の際に
気を付けたい2つの注意点

 

繰り上げ返済をする場合に注意しておかないと、「やっぱり繰り上げ返済なんてしなければよかった」と後悔することになるかもしれません。最後に、繰り上げ返済する場合に注意しておべきポイントを見ていきましょう。

 

<確定申告の額が変わる>

 

繰り上げ返済をすることで、確定申告時の申告額が変更になる可能性があります。その理由は、不動産投資における経費として計上できる利息の額が減少するためです。

 

不動産投資ではローンの利息などを経費として計上することで不動産所得が赤字になれば、その他の所得と損益通算をすることで、課税所得を減少させることが可能です。しかし繰り上げ返済では、元本の返済が進むことで利息の支払いが減り、結果的に経費として計上できる金額が減少します。

 

もし課税所得が増加すれば支払うべき税金額が繰り上げ返済をしなかった場合よりも増加する可能性があります。そのため、繰り上げ返済をするか検討する際は、利息の減少による経費削減効果と税負担の増加を総合的に考慮し、適切な判断を行うことが大切です。

 

<修繕にかかる費用を残しておく>

 

修繕費を手元に残しておくことは、不動産投資を成功させるために非常に重要です。物件の維持管理には、定期的なメンテナンスや予期しない修繕が発生することがあります。これらの費用を適切に準備すれば、物件の価値を維持し、入居者の満足度を高める効果が期待できます。

 

維持管理に使う費用をあらかじめ確保しておけば突発的な修繕に対しても迅速に対応できるため、長期的な空室リスクを避けることが可能です。

 

また、定期的なメンテナンスやリフォームを計画的に実施することによって物件の資産価値を保ち、将来的な売却時にも有利な条件で取引を進められるでしょう。

 

 

繰り上げ返済すべきか否かは
不動産投資の計画による

 

繰り上げ返済を行う際のメリット・デメリットや行うべきタイミング、注意点について整理しましが、いかがでしたでしょうか。繰り上げ返済を行うことでキャッシュフローの増加を見込めますが、繰り上げ返済を行ってもよい人は「手元に十分な余剰資金がある人」というのが大前提です。繰上げ返済の決定は、総合的に検討し、投資家様それぞれの特定の状況に基づいて行う必要があります。繰上げ返済の効果が見合わないと判断される場合は、その資金を他の高リターンの投資機会や流動性の確保に回すことが望ましいでしょう。

 

今村不動産では投資用物件のご紹介にとどまらず、金融機関や専門家との連携をもとにお客様の不動産投資戦略に対するサポートも可能です。不動産投資計画でお悩みの方もぜひお気軽にご相談ください。

 

 

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